一方で、既にiPod touchを利用している立場からすると気になる点もいくつかあった。個人的に心配なのはやはりバッテリーの駆動時間である。アップルの仕様書によると、iPhoneでの3G通話あるいはデータ通信の連続利用時間は5時間となっている。これは一見すると国内各社の最新型の携帯電話端末と比較してあまり遜色ない値ではある。
しかし、音楽プレーヤーとしてのiPodのヘビーユーザーでもある筆者の立場からすると、日頃、携帯電話とiPodで使い分けている端末が1つにまとまるのは非常に魅力的である一方で、実際に想定される利用シーンでは、それらを1つのバッテリーで賄わなければならないことになり、かなり電池の消耗が激しくなると考えられる。例えば、2泊3日で新幹線等を利用した遠地への出張あるいは旅行に際して、充電器具の準備なしで出かけるのは筆者の感覚としてはやや心もとない気がするのだがいかがなものだろうか。
もちろんこれは、アップルの製品に限らず現在の携帯端末すべてに共通する課題でもあるのだが、音楽という用途で突出している同社の商品にとってはある意味避け難い宿命であることも事実だろう。しかし、その様に考えるとビジネス用途でのiPhoneを想定した場合、音楽や動画再生の機能についてはその位置づけには従来のiPodとは異なる考えが必要なのかもしれない。逆に、そうした機能を活用できるニーズから、このマシンのビジネス利用が拡大することになるのかもしれない。意外にもそのことが業種や職種を超えたまったく新しいワークスタイルにつながるのかもしれない。実際、iPhoneの可能性はそうしたことまで感じさせるのである。
一部で指摘されている文字入力の問題については、日頃iPod touchを片手で操作している感覚からすると、さほど大きな障壁にはならないと考える。もちろん携帯電話のいわゆる親指入力に比較して一定の慣れは必要だし、タッチパネル特有の打ち間違いもあるのだが、そのあたりに配慮した新たなソフトキーも用意されているようなので、あとは好みの問題ということになるのではないだろうか。
国内発売の詳細が現時点でまだ明らかになっていないので何とも言えないところだが、日本のキャリア各社が、アップルとどのような交渉を行っているのかは注目点ではあった。既にグーグルのサービスは日本でも標準で提供されることが発表されているが、ソフトバンクのサービス「Yahoo!ケータイ」との関係なども気になるところである。
とりあえず個人的には、(かなり高額の投資であった)iPod touchのアップグレードで新しいソフトウェアの使い心地を楽しみつつ、周囲の評判をみながらiPhoneを購入するかどうかを見極めたいと思っている。別に安くなったことが悔しいわけではない(としておく)。
なりかわ・やすのり 1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授