景気に先行き不透明感はあるものの、グローバル経済をリードする、実力ある日本企業は、確実に利益が生み出せる事業構造への転換を成功させ、事業規模の拡大に乗り出している。ポイントは業務の標準化をITを使っていかに効率よく進めるか。日本のグローバル企業をよく知る日本オラクルの新宅正明社長が、M&Aによって成長できる企業とそうでない企業の違いについて語ってくれた。
ITmedia ユーザー企業を取り巻く環境を新宅さんはどう見ていますか? そして激しい環境の変化に対応するITシステムのこれからの大きなトレンドについてもお聞かせください。
新宅 日本の企業、特にグローバル経済をリードする力のある企業はこの10年でリストラを行い、確実に利益を生み出せる体質に転換してきました。そして彼らはここへきて、その利益を背景とした信用力を生かし、M&Aによってスケールメリットを追求する段階に入っています。
かつて本業とは異なる事業領域への拡大を志向するM&Aの時代もありましたが、今はそうではありません。買収や合併によって1つの事業領域のマーケットシェアを集約するなど、グローバルで戦っていくための取り組みが進められています。
経営体質を強化し、どこに注力すべきか、どこはアウトソースすべきかの見極めもつき、M&Aも進めました。次は、1つの経営メカニズム、1人のCEOがその拡大する事業体をコントロールできるかが問われてきます。
北米の成功している企業では、単一の経営システムが確立されています。従業員や顧客との関係もそうですし、経営を支えるITシステムもそうです。M&Aで事業を拡大していくときにも、コントロールしながらスケールさせ、ボリュームをこなしていく準備が出来ています。どこの会社の出身でも、「このビジネスモデル、考え方でやってくれ」というわけです。
これに対して、日本企業は、経営も含めてシステムがうまく整っておらず、M&Aで事業を拡大していく際の基盤がありません。多くの企業は生え抜き重視のカルチャーであり、他者を受け入れる素地がありません。大学を卒業して入社してから退職するまでずっと同じ会社で働くわけですから、いわゆる「あうん」の呼吸で仕事ができてしまいます。家族のように仲が良く、それ自体はいいのですが、そうした企業文化で企業経営していくと、M&Aによってほかの企業を統合していく際の障壁になってしまいます。
結局、それが間接部門の経費を増大させたり、複雑なビジネスプロセスをそのまま残したり、リスクを散在させたまま放置する、ということにつながってしまいます。せっかくM&Aしたのにスケールメリットを追求できず、コントロールもできない、利益も上がらない、というチャレンジに直面するはずです。
そうしたとき、日本の企業の多くは、経営のシステムや、そのバックボーンにあるITのシステムが標準化されている企業は強い、ということに気が付くでしょう。異なる歴史や文化を持った、しかも「あうん」の呼吸が通用しない海外のグループ企業に対しても、ガバナンスを効かせ、リスクを管理し、従業員や顧客との関係もきちんと最適化できる新しい明快な経営のシステムづくりが求められているのです。
こうした新しい経営の基盤には、ITのシステムは不可欠です。企業がスケールメリットを追求する中、もはやITなしでそれをコントロールすることは不可能でしょう。ITの良いところは、経営のシステムさえきちんと確立されていれば、50人の企業でも5000人の企業でもシステムは1つで同じように運営できます。それが求められているのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授