アンダーソン氏は当初、学部長の役割として、離職するスタッフたちをほかの省庁へ送り出すことも仕事の1つだと考えていた。部隊のCIO職はアンダーソン氏にとって初めての国家公務員職で、そうしたアレンジメントが違法であることを認識していなかったのだ。ただ、離職するスタッフをサポートする仕組みはあった。法律により、部隊で働いた人は連邦政府機関に優先的に就職できることになっているのだ。
また当然のように、ヘッドハンターたちも押し寄せてくる。調査会社のコーン/フェリー・インターナショナルの上級クライアントパートナー、カレン・ルーベンストランク氏は、アンダーソン氏のことをよく知っている。2人はともにアメリカン大学コゴッド・ビジネススクールの委員だからだ。
ルーベンストランク氏は、アンダーソン氏が「少なくとも5年間、平和部隊で働く」と明言していることに、驚きはしないが、残念に思っているという。今後もアンダーソン氏から目を離すことはないかと尋ねると、「もちろん。5年間の最後の年に入ったら、すぐにヘッドハンティングの有力候補になる」と答えた。
アンダーソン氏は、AIDSやマラリアとの闘いに全力を挙げる意向で「部隊を早期に離れる意思はない」と断言する。実際、アフリカではマラリアだけでも毎日3000人が命を落としている。「1日に3000人が亡くなるというのに、何も考えずに毎日を過ごすことができるだろうか?」とアンダーソン氏は言う。
平和部隊は独立系の政府機関ではあるが、雇用や解雇などを含め、連邦政府のルールや規制に従わなければならない。そのため、アンダーソン氏が勝手に後継者を選ぶことはできない。しかし、ヘッドハンターがやってくるまでには、自分の知識やノウハウはすべて副官に引き継いでいることだろう。
その後オフィスを離れるためにすることは、壁に張ってある、娘の描いた蝶の絵をそっとはがして持ち帰るだけである。
※本稿の内容は2007年2月時点となる。
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明治学院大学 経済学部准教授