今後は仮想化をうまく使いこなす技術力が、IT市場での競争力を左右するともいわれていることから、ここにきてハード・ソフトメーカーの多くが本格的に取り組んでいる。中でもいま一躍脚光を浴びているのが、創業10年足らずのソフトベンチャー、米VMwareだ。同社は他社に先駆けてPCサーバ用の仮想化ソフトを投入。その先進的な機能が評価され、今ではPCサーバーメーカーの大半が採用している。
マイクロソフトが仮想化に本腰を入れ始めたのは、このVMwareの台頭も大きく影響している。マイクロソフトにとっては、OS選択の自由度が高まる仮想化で、VMwareなど他社に主導権を握られれば、収益の柱であるWindows事業の優位性が揺らぐ恐れがある。そのため、Windowsの競争力強化と並行して仮想化にも力を入れ始めたのである。
マイクロソフトは今回の新たな仮想化戦略の目玉として、今年4月に本格出荷を始める次期サーバ用OS「Windows Server 2008」に同社独自の仮想化ソフトを標準装備し、VMwareが先行する仮想化ソフト市場での巻き返しを図る構えだ。ともあれマイクロソフトが本腰を入れ始めたことで、仮想化技術の普及は今後急ピッチで進みそうだ。
ただ、業界関係者の中には、昨今の仮想化ブームともいえる風潮を懸念する声もある。大手システムベンダーでサーバの開発に携わるエンジニアはこう警鐘を鳴らす。
「仮想化はそれそのものがソリューションなのではなく、あくまでツールだと認識しておくことが大事。もともと余裕のあるリソースを有効活用するべく生み出されてきた技術だが、例えばサーバの場合、CPUの処理能力には余裕があるとしても、メモリ容量や入出力部分の処理能力には余裕がないケースがある。サーバ仮想化というとCPUリソースの有効活用ばかりに目を奪われがちだが、メモリや入出力部分も仮想化に対応できるリソースがないと全体として効果を生み出すことはできない。システム全体の仮想化をバランスよくプランニングし構築していくことが肝要だ。そうした認識をしっかり持っておかないと、仮想化したけど思うように効果が出ない、追加リソースに余計な費用がかかってしまった、といった状況に陥りかねない」
また、仮想化技術に詳しい業界関係者も「サーバ仮想化は今後さまざまな用途に活用されていくだろうが、用途として向いていない分野もある。例えば、オンラインレスポンスが要求されるシステムやリソース使用率が常に高いシステムがあげられる。そうした点をあらかじめ考慮しておく必要がある」と指摘する。
これらの仮想化における注意点については、ITシステムの構築・運用担当者はもちろん、経営者も知っておくべき勘所ではないだろうか。仮想化はあくまでツールかもしれないが、それを有効活用するには的確な経営判断が要求されるケースも出てくる。技術の詳しい内容は別としても、その本質や効果におけるポイントは押さえておきたいところだ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授