二者択一を超えたシステム構築手法を探る開発か購入かの時代は終わった(3/3 ページ)

» 2008年07月15日 07時00分 公開
[Matt Villano,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

プロバイダーを通したもう1つのアプローチ

 ハイブリッドアプローチのもう1つの例は、サービスプロバイダーを通して行う方法だ。カリフォルニア州レッドウッドシティのデータベース会社、イングレスのCIO、ドーグ・ハー氏はしばしばこの方法を用いている。同氏が率いるIT部門は小規模であるため、いくつかの分野でオンデマンドのアプリケーションを利用したり、アプリケーション開発を外部に委託することが多い。例えば、顧客関係管理(セールスフォース・ドットコム)、ERP(インタックト)、人事管理(ADP)、電子メール(インサイト)などがそうだ。

 ハー氏は市販のソフトウェアをベンダーから購入しているので、単なる製品購入派ではないかという議論もあるだろう。しかし同氏は、アプリケーションに対価を支払うのはそれを必要とするときのみで、かつカスタム化が含まれるサポート契約だけだ、と反論する。

 「例えば、大規模なSAPのERPソリューションを購入する場合は、製品寿命に合わせて減価償却することになる。もし月ベース、あるいは年ベースで支払うことができれば、特に市場の変化が激しいときなどは、ビジネス的なメリットは大きい」

 もちろん、そうした意思決定はしばしば、そのアプリケーションの機能が会社に競争優位をもたらすか否かという点に帰着する。「もし独自にソフトウェアを開発すれば、市場で他社と差別化できる、あるいは顧客ベースを拡大できると考えられるなら、そうすべきだろう」と語るのは、ニューヨーク州ホワイトプレインズの米国テニス協会(USTA)のCIO、ラリー・ボンファンテ氏だ。「しかし、差別化に役立たないのなら、そうすべきではない」と同氏は明快だ。全米オープンテニストーナメントを配下のスタッフ30人とともにIT面でサポートするボンファンテ氏は、日常的に市販パッケージを探す努力をしている。USTAは.NETベースのショップだが、今後はそれにとらわれることなく、Webサービスやオープンソースを利用して、より優れたサービスの提供を目指す考えだ。

マッシュアップで新たな可能性が広がった!

 マジェスティック保険のCIOからサンフランシスコのソフトウェア会社CTサメーションのPMOエグゼクティブへ転身したITリーダーのジェームス・ウールワイン氏は、こう考える。アプリケーション開発の鍵は、すべての市販パッケージをテーブルドリブンにする動きだ。これによりCIOは、独自にさまざまな製品を試し、マッシュアップアプローチのあらゆる側面をインハウスで確認できるようになる。それらのテーブルは、非常に使いやすく、企業アナリストもアプリケーション開発者も必要とせず、さまざまな変更を行うことが可能になるという。

 「多くのCIOが“われわれのビジネスは特殊なので市販のソフトウェアは適さない”“社内開発しかない”と言う。しかし、この方向で進めば、さまざまな困難を回避することができるだろう」と同氏は語る。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆