ハイブリッドアプローチのもう1つの例は、サービスプロバイダーを通して行う方法だ。カリフォルニア州レッドウッドシティのデータベース会社、イングレスのCIO、ドーグ・ハー氏はしばしばこの方法を用いている。同氏が率いるIT部門は小規模であるため、いくつかの分野でオンデマンドのアプリケーションを利用したり、アプリケーション開発を外部に委託することが多い。例えば、顧客関係管理(セールスフォース・ドットコム)、ERP(インタックト)、人事管理(ADP)、電子メール(インサイト)などがそうだ。
ハー氏は市販のソフトウェアをベンダーから購入しているので、単なる製品購入派ではないかという議論もあるだろう。しかし同氏は、アプリケーションに対価を支払うのはそれを必要とするときのみで、かつカスタム化が含まれるサポート契約だけだ、と反論する。
「例えば、大規模なSAPのERPソリューションを購入する場合は、製品寿命に合わせて減価償却することになる。もし月ベース、あるいは年ベースで支払うことができれば、特に市場の変化が激しいときなどは、ビジネス的なメリットは大きい」
もちろん、そうした意思決定はしばしば、そのアプリケーションの機能が会社に競争優位をもたらすか否かという点に帰着する。「もし独自にソフトウェアを開発すれば、市場で他社と差別化できる、あるいは顧客ベースを拡大できると考えられるなら、そうすべきだろう」と語るのは、ニューヨーク州ホワイトプレインズの米国テニス協会(USTA)のCIO、ラリー・ボンファンテ氏だ。「しかし、差別化に役立たないのなら、そうすべきではない」と同氏は明快だ。全米オープンテニストーナメントを配下のスタッフ30人とともにIT面でサポートするボンファンテ氏は、日常的に市販パッケージを探す努力をしている。USTAは.NETベースのショップだが、今後はそれにとらわれることなく、Webサービスやオープンソースを利用して、より優れたサービスの提供を目指す考えだ。
マジェスティック保険のCIOからサンフランシスコのソフトウェア会社CTサメーションのPMOエグゼクティブへ転身したITリーダーのジェームス・ウールワイン氏は、こう考える。アプリケーション開発の鍵は、すべての市販パッケージをテーブルドリブンにする動きだ。これによりCIOは、独自にさまざまな製品を試し、マッシュアップアプローチのあらゆる側面をインハウスで確認できるようになる。それらのテーブルは、非常に使いやすく、企業アナリストもアプリケーション開発者も必要とせず、さまざまな変更を行うことが可能になるという。
「多くのCIOが“われわれのビジネスは特殊なので市販のソフトウェアは適さない”“社内開発しかない”と言う。しかし、この方向で進めば、さまざまな困難を回避することができるだろう」と同氏は語る。
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