アプリケーション開発の世界では、今日、3つのアプローチがキーワードとなっている。すなわち、Webサービス、オープンソース、そしてアジャイルだ。これらは相互に排他的なものではない。迅速なプロセスに取り組みながら、オープンソースソフトウェアを利用して、アプリケーション開発を進めることができる。
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企業がアプリケーション開発にXMLベースのツールセットを利用するようになるとともに、Webサービスは今日のアプリケーション開発の最もホットな分野になった。CIO Decisions誌の調査によると、回答企業のおよそ半数はWebサービスを利用している。
プログラムを建造物と考えれば、Webサービスはハンマーや釘と言えるだろう。企業は一般に、RPC(リモート・プロシージャ・コール)、REST(レプレゼンテーショナル・ステート・トランスファー)、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の3つのタイプのオペレーションにXMLを利用している。なかでも現在最も流行しているのは、通信の基本ユニットがシングルメッセージのSOAだ。フォレスター・リサーチの上級アナリスト、ジェフェリー・ハモンド氏によると、このタイプのWebサービスは柔軟性が高く、使い勝手に優れているという。
SOAは柔軟結合のトランスペアレントなサービスで構成され、再利用可能なサービスを活用して迅速にソフトウェアを構築できる。このアーキテクチャを導入した企業は、一気に各種サービスへ移行することができ、混乱を最小限に抑えることが可能だ。そのほか、独立したテストと検証で品質を改善できることや、個別のプログラムをオープンな標準技術を用いて統合化できる、あるいは既存の転送プロトコルやインターネットのインフラを利用してコストとリスクを抑える。
もちろん、こうした柔軟性は、一方でネガティブな面も併せ持つ。強固に保護されたアプリケーションでさえ、ハッカーたちには容易に弱点を探り出すことができるため、セキュリティが問題になる。またパフォーマンスも厄介な問題だ。XMLに依存するサービスやアーキテクチャは高速化に適していない。
「(SOAは)伝統的にテキストベースのメタデータを含むドキュメント形式であるため、ネットワークやプロセッサ、ストレージのパフォーマンス的にはきわめて非効率的」と、マサチューセッツ州ウォルサムにあるザップシンクの上級アナリスト、ロン・シュマイザー氏は説明する。
ただし、パフォーマンスを改善する手段はいくつかある。シュマイザー氏によると、特殊なハードウェアアクセラレータの利用、ソフトウェアの最適化と圧縮、パーズされていないテキストベースのXMLからバイナリXMLへの変換という3つのアプローチが考えられるという。
オープンソースソフトウェアの利点はよく知られている。なかでも、ソフトウェアの再利用を推進できる、品質とセキュリティを向上できる、ベンダーの囲い込みに対抗できる、カスタム化の柔軟性が高いなどのメリットは大きい。短期的に見れば、オープンソースのソフトウェアやサービスは、特定の問題点を解決する簡便な手法を提供してくれる。
またフォーカスがはっきりしているため、特にアプリケーションの長期的な目標、目的がプロジェクトの指針や投資判定に含まれていない場合でも、開発チームは投資回収率(ROI)を比較的すばやく認識することができる。カリフォルニア州レッドウッドシティにあるイングレスのCIO(最高情報責任者)、ドーグ・ハー氏は、その点に注目した。同氏は、低コスト、大規模な可用性、ソリューションや拡張機能の開発に熟達した巨大な開発コミュニティーの存在という3つの理由から、オープンソースを支持する。
「結局、本当に欲しいものは信頼できるソフトウェアなのだ」とハー氏。「われわれは低コストでビジネス問題を解決できるものを求めている」
オープンソースはいまや企業のアプリケーション開発戦略における重要なパートになった。流通するソフトウェアパッケージの手直しに簡単に利用できるからだ。しかも、ほとんどの企業はインハウスでオープンソースを利用しているが、レッドハットやノベルなどのベンダーから多様なソリューションが提供されており、それらの製品を購入して、将来のアプリケーション開発のベースにすることができる。
また、.NETアプリケーションを記述できるオープンソースソフトウェア、RubyCLRの登場により、ハー氏などのCIOは、アプリケーション開発におけるオープンソースへの依存度が今後さらに高まると見ている。
おそらく現時点において、オープンソースの唯一の欠点と言えるものは、セキュリティだろう。英国におけるオープンソースムーブメントのトップリーダー、アラン・コックス氏は、1年ほど前から、ハッカーたちがオープンソースに注目するようになったと注意を呼びかけている。「オープンソースソフトウェアのセキュリティが強化され、より信頼できるようになったと多くのメディアが書いている。確かに莫大な資金がセキュリティ強化のために投入された。しかし事態はますます深刻さを増している。セキュリティを破るために投入される資金も増加しているからだ」と、同氏は2006年ロンドンで開催されたLinuxWorldカンファレンスで警告した。
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明治学院大学 経済学部准教授