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» 2008年08月06日 12時44分 公開

システム改善がワイキキでの多角化事業の成功を生み出した【後編】老舗の伝統とITの融合(2/2 ページ)

[Michael Ybarra,ITmedia]
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ビジネス本位を徹底して売り上げを伸ばす

 アウトリガーの本社を出て、ホワイト氏は数ブロック先のビーチに向かう。同社のいくつもの施設を通り抜けたホワイト氏は、ワイキキ・ビーチ・ウォークをぶらつきながら、客室稼働率や不動産コストのほか、小売業とのシナジーについて語る。ビーチ・ウォークは、アウトリガーが07年にオープンした複合施設。8エーカー(約3万2000平方メートル)の敷地にホテル、レストラン、エンターテイメント施設などが集積している。5億3500万ドルが投じられたこの複合施設の建設プロジェクトは、ワイキキの歴史上最大の開発プロジェクトで、アウトリガーが進めている多彩な事業展開を象徴している。現在、アウトリガーの売上高のうちホテル事業の割合は半分にすぎず、小売りが4分の1を占め、施設の受託管理がこれに続く。

 「直近の06年度は売上高が過去最高の4億7490万ドルに達した」(ホワイト氏)

 ホワイト氏はアウトリガーのビジネスに精通している。04年に同氏は、ビジネスへのITの貢献とそのコストの実態を、社内に周知する必要があると判断。IT部門の予算をゼロベース予算に切り替えた。ゼロベース予算では、すべての予算項目が既定とは見なされず、前年実績にかかわらず、年度ごとに新規項目として査定し直され、予算が配分される。

ホテルのIT化に成功、2005年にCIOに!

 ホワイト氏は、宿泊客当たりのコストに加え、900人の社内ユーザーに提供されているITサービスの詳細な内訳を示すレポートを作成した。これによりコンピュータにどれだけのコストが掛かっているかが具体的に把握できるようになり、あるホテルはそれを踏まえてマシンの台数を85台から55台に減らした。

 「わたしは予算会議で不満を聞くのにうんざりしていた」とホワイト氏。「各ビジネス部門はIT予算の一部を負担していたが、自分たちがどのようなITサービスを受けているかを分かっていなかった。今では、われわれのほぼすべてのサービスは価値を定量的に評価されており、トランザクションに関連付けられている。マネジャーはどのITサービスについても、コストをきちんと認識している。彼らはコストを納得してくれている」

 ホワイト氏はサービスレベル契約(SLA)を導入し、社内に対して請求するIT費用を1室1泊当たり40セントに設定した。同氏はほかのホテルやリゾート会社のIT担当役員とビールなどを飲みながら交流する場で、競合他社のITサービスコストの水準を確認し、アウトリガーのコスト水準をそれらに照らして評価する。

 アウトリガーのビジネスにとってITの重要性が増す中で、ホワイト氏は、自分自身がスキルに磨きをかける必要があると考えた。同氏はオンラインファイナンスコース(同氏が言うところの「ミニMBA」)を受講し、同社の積極的な事業展開により深く貢献することを目指した。

 05年にドゥローシャー氏が退職の準備を進めていたころ、ホワイト氏は取締役会に呼ばれ、向こう5年間のITに関する計画のプレゼンテーションを行った。その後、CEOのケアリー氏はホワイト氏をCIO(最高情報責任者)に任命したのだった。

コラム:人材難を乗り越えて次なるステップへ

アウトリガーのホテルのビーチサイドに用意されたテーブルで、アロハシャツ姿でドリンクをすするホワイト氏の仕事は、理想的に見える。だが同氏には、楽園の地で働くCIOならではの苦労もある。

ハワイはハイテク雇用数が米国の州の中で47位にとどまっている。州の失業率は2%だが、多くの人が複数の仕事に就いている。米国で一番物価が高い部類の土地で収支を合わせていくためだ。

ホワイト氏は、28人のITスタッフを補強する場合、飛行機で行き来することになる米本土のコンサルタントを雇わなければならない。ホワイト氏がアウトリガーを初めて訪れたとき、同社ではCOBOLがメインに使われていた。業務に関連する認定資格を持っているスタッフは1人もいなかった。

「ここは人材が少ない」と同氏。「アメリカと外国の中間だ。本土から2500マイル(約4000km)も離れているが、まさにそんな気がする」

ホワイト氏はスタッフを5人採用しなければならなかったとき、適任者を見つけるのに8カ月かかった。本土から来た2人の新入社員がハワイになじめず、退職したこともあった。また、コーディング作業を本土にアウトソーシングしなければならないことも少なくない。

スタッフを研修に派遣したところ、技術的な力量が向上したが、ホワイト氏は、ITチームにビジネスの現場を体験させる必要もあると考えた。

「われわれが目指した大きな変化の1つは、われわれのチームとビジネスサイドの連携の強化だった」とアウトリガーのITディレクター、ジョアン・オオカワ氏は語る。「われわれのチームは多くのIT部門と同様に、ユーザーから見ると、誰に話をすればいいのか分からない、距離のある相手だった」

ホワイト氏はまずコーディング担当者を予約センターに派遣したほか、ホテルのナイトマネジャーの仕事を見学させた。

「わたしは社内サービス業務と、顧客と接する業務を両方経験している」と同氏は説明する。「ナイトマネジャーとして働いていたとき、女性にハンドバッグで顔を叩かれたことがある。彼女がホテルを間違えていたので、そう説明したら、逆上されてしまった。顧客向けのヘルプデスクを担当させたITスタッフも、顧客が突然横暴な態度に出るケースに何度もぶつかり、震え上がっていた。とはいえ、こうした業務現場を身をもって知ることが重要だ。これまでにITスタッフには、客室の掃除以外は何でも経験してもらっている」


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