さて、最後に3つ目のフレームワークをご紹介しましょう。このフレームワークは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究により開発された(弊社もこのフレームワーク開発に協力しました)もので、弊社のCIO Agenda リサーチでも、このフレームワークに基づいて調査されます。このフレームワークは、以下のように予算を4つに分類します。
企業効率を高めるために企業全体にわたって共有される、信頼性の高いサービス(ネットワーク、共有データ、ヘルプデスク)として提供されるIT 能力(アプリケーションを除く)の基盤。
一般的には、企業活動における日常的な業務(例えば、受注業務、購買、請求など)を自動化することによりコストを削減して、企業効率を高めるアプリケーション。
企業を管理し統制するための情報を提供するアプリケーション。これには、企業効率を高めるための意思決定、コンプライアンス、報告、計画立案、およびコミュニケーションに関連するアプリケーションが含まれます。
競争優位を獲得し、業務の拡大をもたらすアプリケーション。あるいは、新規または強化されたサービスを提供して競争優位を獲得することにより、市場での企業の立場を確立するためのアプリケーション
図3に、このフレームワークを図示してみました。 数字は、Gartner CIO Agenda リサーチ 2007から得られた数字です。全世界、全産業の1400人以上のCIOが回答した結果の平均値です。左図が2007年のIT予算、右が2010年のIT予算の予想です。情報系アプリケーションや戦略的アプリケーションの数字が高くなるだろうことをCIOが予想していることが分かります。こういう大きなトレンドに、自社が合致しているのか、していないのか、これよりもさらに進化しているのかを比較するだけでも、経営者に対して自社ITの(費用ポートフォリオでの)優位性を説明できると思いませんか。
「理屈は分かったけど、誰が計算するのですか?」というご質問を、以前いただいたことがあります。これは、管理会計を担当している部門では算出できません。CIO配下にIT予算を策定し、その進捗をチェックする専任担当をおき、そこで計算するべきだと、ガートナー エグゼクティブ プログラムではお話をします。
IT部門は、開発と運用だけではうまく回りません。戦略の企画立案、ITプロセスマネジメントや、いまお話した計数管理などの業務なども重要です。そういう専任者を獲得し育成することもCIOの重大な職務です。もしあなたがCIOで、開発と運用だけの人材でITをビジネスに貢献させようとしているならば、あなたが経営トップから理解を得られない状態になっていても、何ら不思議ではありません。
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。日本のCIOは、経験値だけでなく、最新のグローバル標準を研究した上で市場競争力を高めるべきとの持論を持つ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授