IT投資の責任は誰にあるのかGartner Column(3/4 ページ)

» 2008年09月05日 08時00分 公開
[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

 次のフェーズが「開発フェーズ」です。具体的なソリューションを開発します。ITソリューションだけではありません。商品やサービスの開発であったり、そのことによる調達や物流、経理・財務、人事などに対するソリューション開発であったりします。社内外のあらゆるリソースに関連したソリューションが必要になります。新しいビジネスや業務に対する受け入れ態勢を整備します。この仕事を変更管理(チェンジマネジメント)業務と呼びます。変更しやすい組織能力、経営能力もしくは風土や文化を「アジリティがある」と表現します。

 このコラムの2回目で「CIOが持ちうるケーパビリティ(能力)にアジリティがあります」とお話したのは、まさにこのことです。受け入れ態勢を整備するための具体的な作業には、教育・研修、これは作業レベルではなくビジョン・方針を徹底的に理解させるための情操面での教育が中心になると言っても過言ではありません。変化はどんな人にも苦痛を強います。

 変化することによって企業やそこで働き生活を営む人々、顧客がどんなに利益を享受できるのかを心の底から理解できなければ、本当の意味での変化は難しくなります。それに対するケアこそが、チェンジマネジメント(変更管理)の極意の1つなのです。

 さて、この受け入れ態勢の整備後は、ソリューションを順次導入していきます。順次導入と書いたのは、一気呵成に最終フェーズに突入する方法もありますが、組織やそこで働き生活する人々にはその数だけ異なる文化や特性があります。つまり、変化を受け入れる度量の大きさに相違があるわけです。チェンジマネジメントのもう1つの極意は、この変化の度量に応じてソリューションを順次導入していくことなのです。

 変化を受け入れる度量を大きく超えてソリューションを提供することは、企業にとってリスクです。リスクを最小に抑え、変化による利益を極大化させることがチェンジマネジメントそのものです。残念なことにビジネスのフロントラインにはない能力であり、結果的にCIOやCIO配下にあるCIOオフィス/IT部門の中に持たざるを得ない能力の1つなのです。

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