今回はIT投資の責任は誰にあるかについて考えます。IT投資の失敗はビジネス部門の責任だと思っている人も多いのではないでしょうか。
前回、前々回とIT予算のお話をしました。今回はIT投資の責任は誰にあるかについて考えます。
最初から、CIO(最高情報責任者)やITエグゼクティブの方々にはショッキングなデータを示さなければなりません。「2005年のGartnerの調査によると、CEOの96パーセントが、IT投資を含んだプロジェクトの結果、当初見込んだ利益が未達だった場合に、問題の発生箇所がどこであれ原因をIT部門に帰す」と言っています。
これには、多くのCIO/ITエグゼクティブの皆さまが驚きました。IT投資を含んだプロジェクトは、結果的にプロジェクト内の投資のほとんどがIT分野で占められたりするものです。しかし、IT部門側に属する人はたとえCIOであっても、実際にシステムを利用してビジネスベネフィットを得るのは当該ビジネス部門であり、失敗するのもビジネス部門の責任であると思っているでしょう。
このコラムは「経営とITの関係を改善する」という難解なテーマについてご説明しようとしていますが、これでは経営側がIT部門を知らなすぎるとお感じになる読者も多いのではないでしょうか。
実はここが盲点なのです。経営トップが「問題の発生箇所がどこであれ、原因をIT部門に帰す」と言っているわけです。ということは、ビジネスベネフィットを収穫する管理責任をCIO/IT部門に委ねていると考えた方が自然でしょうし、気が休まります。
ビジネス部門も仕事をしていないわけではありませんし、可能な限り高い到達点を目指して努力をしています。しかし「他部門との調整」や「業務の変更」が円滑に進まないことにより、目標とする到達点に届かないことが度々発生することは、読者の皆さまも日常的に経験されていることでしょう。
経営トップは、ビジネスの現場が常にフロントを向いているために社内の調整や、業務変更のアナウンスなどの手続きがうまくないことを熟知しています。これら「システム系全体(とでも表現しましょう)」をうまくサポートしてやってほしいという経営トップの願いが、冒頭の調査結果のような数字になるのです。
しかも、さらにショッキングなデータは続きます。前回のコラムで紹介した「4分類によるポートフォリオ(図1)」をもう一度見てみましょう。「IT基盤」は2007年に37%でしたが2010年に32%程度に減少するだろうと予想されており、「基幹系アプリケーション」は、同様に26%が25%に減少するだろうとCIOは予想しています。
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明治学院大学 経済学部准教授