コラム
» 2008年09月05日 08時00分 公開

Gartner Column:IT投資の責任は誰にあるのか (4/4)

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]
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 最後のフェーズが「収穫フェーズ」です。ビジネスベネフィットを実務の中で収穫していきます。これは、ビジネスのフロントラインが中心になって収穫していきます。しかし、最初から想定通りの利益を収穫できることはまれでしょう。収穫には時間がかかることも少なくありません。しかし、収穫フェーズが、計画フェーズで想定した通りに実行されているかどうか、想定外の事象が発生し、再調整が必要になっていないかどうかを客観的に管理し判断することが必要です。

 この客観的な判断を基に、IT部門を含めすべての関係者が学習し、成長していく仕組みが必要となります。実は、この収穫フェーズは、CIOやIT部門は出しゃばり過ぎないことが重要な場合が多いようです。なぜなら、投資に対するベネフィット管理業務は通常CFOおよびCFO配下の部門(経営管理部などと呼ばれる部署)の方が適任だからです。

 しかし、CIO/IT部門はこれらの部門の活動に積極的に関与し、管理業務を支援することを怠らず、収穫フェーズから得られる(うまくいった事象、うまくいかなかった事象などの)情報からさまざまなビジネスケースを学習することに貪欲になり、さらなるソリューションを提案する活動に力を入れます。このようなライフサイクルを通じて、ビジネスフロントラインと、IT部門、そして関連する社内外のリソースとの良好な関係を築きあげていくのです。

 IT部門の信頼は一朝一夕に築けるものではありません。地道な努力と、他部門にはないケーパビリティ(IT開発力・運用力だけではない)を提供して企業組織として結果を得ることに貢献していかなければ信頼は築けません。

ITシステムのライフサイクル

 図3をご覧ください。一般的なIT開発、導入のライフサイクルと、今回ご説明した利益のライフサイクルを同じ図に重ねたものです。破線で挟まれた部分が一般的にいわれる「プロジェクト」期間を表しています。ビジネスのフィージビリティスタディに参加することもなく、社内の各部門に対するプロセス調整もせず、もちろんチェンジマネジメント(変更管理)など眼中にないというCIOの方も、この図を見れば、実ビジネスにおける自身の影響力の低さに唖然とするはずです。

 CIOは、経営者の一翼を担うポジションです。仮にIT部門長としてシステム開発・運用だけに職務の範囲を限定すれば、IT予算内がCIOの責任範囲です。しかし、IT予算は、良くも悪しくも、売上の1〜2%程度というところでしょう。企業への影響は、経営者の一翼を担うといってもたかだか1〜2%程度なのです。

 しかも、ほかの上級エグゼクティブやトップマネジメントからは、IT予算の削減だけを求められるでしょう。つまり、組織内での影響力を自ら縮小するように求められるのです。しかし、IT開発プロジェクトを、ビジネスベネフィットを収穫することにフォーカスして経営者の一人として、もっと深く関与することができれば、影響力が増大することは間違いありません。ビジネスのフロントラインからも信頼され、ガバナンスは自然に効いてくるはずです。

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著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。日本のCIOは、経験値だけでなく、最新のグローバル標準を研究した上で市場競争力を高めるべきとの持論を持つ。


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