300億円を投じ、3年以上かけた大型システム構築プロジェクトが完了した。日本航空は約100の業務システムを統合した新整備業務システムを本格稼働させた。
日本航空(JAL)が、機体やエンジンの品質管理などを一元化する新整備業務システム「JAL Mighty」を11月中旬から全面稼働したことを明らかにした。2005年4月から足かけ3年半という大プロジェクトだった。投資額は2010年までのシステム投資全体の半分に上る300億円に達した。「機能ごとにばらばらだった整備システムを一元化することで、運行の安全性確保と在庫などのコスト削減効果が見込める」(JAL)としている。
同システムは、約160機の機体、460基のエンジン、50万個の装備品の整備計画や、品質管理、部品在庫管理を行い、約6000人の整備士などが利用する。JALの約100の業務システムをSAPの統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP R/3」に統合したことで、業務プロセスの標準化や情報のリアルタイム化を図る。
従来のシステムは1971年から「継ぎ足しで構築してきたもの」(同)だった。整備システムで管理する部品はおよそ50万点に及ぶが、システムごとにばらばらに管理していたため、部品番号の入力間違いやデータの多重入力といった問題が生じていた。新システムは、複数のシステムを統一したため、個別の整備システムやデータの管理に起因する業務の煩雑さを解消できる。航空機機材や部品の品質管理業務などを正確にできるようになるため、結果として運行の安全性が向上するという。
新システムによるコスト削減効果として「在庫を3%程度削減できる」と期待している。50万点の部品について、それぞれ200個程度という膨大な在庫数があるため、3%の削減効果は非常に大きい。300億円に上った投資は、10年前後で回収できるとみられる。
「つぎはぎだらけの旧システムの老朽化」が刷新の最大の理由だった。2005年の運行トラブルの原因は情報システムではないと判断していたが、情報システム刷新による安全性強化も見込んで、2006年から2010年までの中期経営計画を作成したという。
プロジェクトは最大で、日本IBMが400人、JAL側も技術担当者と情報システム室の計150人強が関与し、インドと日本のIBMの開発拠点が協同で実施した。なお、ソフトウェアの提供はSAP、導入のコンサルティングサービスはIBCSがそれぞれ担当した。
同様の整備業務システムは、英British Airwaysやシンガポール航空など16社でも採用されている。このたびのJALのプロジェクトには、ほかの航空会社への導入経験を持つIBMのコンサルタントがイギリスやフランスなど約10カ国から参加した。
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