11月2日に開催された「BEA Japan Forum 2007」では、日本マクドナルドなどユーザー企業によるセッションが設けられた。
「日本マクドナルドにおける共通基盤とITガバナンス」と題されたセッションでは、日本マクドナルド インフラシステム本部 溝江言彦氏が、同社のIT基盤に対する考え方について語った。
日本マクドナルドでは「プロジェクトEBIS」(Enterprise Business Information System)と名付けられた基幹システム再構築プロジェクトが進行中だ。溝江氏はプロジェクトEBISについて「単なる基幹系のリプレースではなく、抜本的な改革」と説明する。
基幹システムとして目指すべきゴールは「事業推進ナビゲーションの実現」「業務プロセスの最適化」「システムアーキテクチャの整備」「TCOの削減」の4点だという。
「つまるところ、費用がかからず柔軟に最適化できるインフラを目指す、ということになるでしょう」(溝江氏)
ちなみに溝江氏は、福岡県のCIO補佐官から日本マクドナルドに移った、ちょっと変わった経歴の持ち主。実は、その自らの経歴がプロジェクトEBISにおいても役に立っているという。
福岡県では、ITガバナンスや調達に関する施策を担当しており、全国の自治体で初のEAとなる「福岡県電子自治体共通化技術標準」に携わった。
「アプリケーション間でシステム連携やデータ連携を可能にするルールを標準として定めることで、異なるベンダーがそれぞれのシステムを担当しても、きちんと全体が連携できるようにするという内容です。ブラックボックス化を避け、ガバナンスを確立すると同時に、標準を明確にすることでアウトソーシングなども行いやすくなります」(溝江氏)
プロジェクトEBISにおいても、同様の標準化が進められている。日本マクドナルドにおいては、それを「MITS」(マクドナルド情報システム標準)と呼ぶ。
汎用的な内容を示す「標準」、詳細な項目を書き出した「ガイドライン」、そして実際のプロセスに落とし込めるまで具体的に記述された「手順書」の3段階の文書を「開発・運用プロセス」「セキュリティ」「技術」の三つの分野で作り上げており、ほぼ完成しつつあるという。
「設計、開発、運用など、ITライフサイクルの各フェーズで必要となる文書を体系立てて整理したものです。例えば、これまでのRFPでは、仕様にあいまいな点が含まれることが多く、結果的に後で発注側が苦労します。社内IT部門というのは、おおむね技術的にはセミプロですから、ベンダーさんほど詳細には記述できないのですね。そこでは技術標準書が役に立ちます。ビジネスロジックの要件だけ書いておけばきっちりした仕様書を作れるのです」と溝江氏は言う。
この技術標準をパートナー各社に公開することで、発注者が後に困るような危険も減らせるし、IT調達の段階からガバナンスを確立できる。また、技術仕様が明確だから、パートナー側も思い切った機能提案を行いやすい。
「何にせよ、見えなくてはコントロールできません。プロジェクトEBISで実現しようとしているのは、業務を見える化するIT基盤。そのIT基盤を見える化するのがMITSという位置付けになります」(溝江氏)
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