実用段階に入るSOA――マクドナルドやNTTドコモの取り組みBEA Japan Forum 2007リポート(3/3 ページ)

» 2007年11月06日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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SOAに対する考え方は「What」から「How」へ

 また当日は「ユーザー企業のアーキテクトが語るSOA導入の勘所」と題し、パネルディスカッションが行われた。

 パネラーは、出光興産 情報システム部 澤井隆慶氏、NTTドコモ プロダクト&サービス本部 斎藤剛氏、三井住友海上火災保険 IT推進部 田中敦史氏、日本BEAシステムズ シニアプリンシパルコンサルタント 岡嵜禎氏の4名。モデレーターは、日本BEAシステムズ SOAビジネスディベロップメント 神沢正氏が務めた。

日本BEAシステムズの神沢氏(左)と岡嵜氏(右)

 ディスカッションの冒頭、神沢氏は「『What』から『How』へと、SOAについての考え方が変わってきたように、現場では感じられます」と語った。

 パネラーとして登場したユーザー3社では、それぞれが「なぜSOAにしなければならないのか」という問いに対する答えを出した上で「どのようにSOAを構築し、活用していくか」に取り組んでいるという。

 「SOAに総論では賛成できるものの、取り組むきっかけをつかむのが難しいと感じています。SOAを始める前に、例えば導入効果を策定したり、アプローチを決めたり、推進体制を作ったりと、やらなければならないポイントがありますが、どちらかというと業務アプリケーション側よりも技術側の都合で動き出すことが多いようにも思われます。そのあたりが実際のユーザー企業において課題になっているのではないでしょうか」と述べた岡嵜氏に対し、斎藤氏は、実態を次のように説明する。

 「イニシャルコストをかけてSOAを始める、などと言えるような余裕はなく、デシジョンメーカーがSOAに対する予算に理解を示してくれるかどうかが大きな壁となります。私個人は、ゲームだと思って取り組むようにしています。各業務アプリケーションやビジネスそのものから考えて、中期的な課題を洗い出し、その解決策としてSOAを提案するような方法を採りました。このようにしてSOAを認知してもらい、コンセンサスを得るという方法です」

 一方、田中氏は「当社では、当初からSOAを意識していたのではなく、BPMからスタートし、その後にWebサービス化し、さらにプロセスを重視するためSOAへ、という流れになりました。結果的には、課題解決型だったと言えるでしょう」と説明する。

 澤井氏もまた、全社的なシステム再構築プロジェクトに対し、SOAを明確に意識せず取り組み始め、コスト効率や柔軟性の高いアーキテクチャを考えているうちにSOAへ行き着いたという。

左から三井住友海上火災保険 田中氏、NTTドコモ 斎藤氏、出光興産 澤井氏

SOAはきれい事だけでは実現しない

 斎藤氏は、実体験をもとに「策に溺れるな」と戒めのコメントを述べた。

 「システム統合で開発費を削減しようというプロジェクトで、SOAによる試算を行おうとしたら前提条件を詳しく説明せねばならず、SOAのメリットを説明することが難しくなってしまいました。コストを算出しやすいようハードウェア統合の話題に切り替えようとしましたが、そうしたらSOAの話題ですらなくなってしまう。具体的な効果を、上手に導き出す工夫が重要ですね」

 その失敗を踏まえ「考えるよりやってみろ」的アプローチの方が、ッスムースに進めやすいと言う。

 「SOAアーキテクチャを描いてしまうと、そこに入れるモノは何なのかと一生懸命考えてしまいがちです。しかし、普段からレガシーの設計開発をしてきているのであれば、きちんとしたルールを持っているはず。その延長線上でSOAのルールを考えていけば、案外大変なものではないと思うのですね」

 岡嵜氏も、あまり複雑に考えず、まず取り組むことを勧めている。

 「一見すると相反するような内容の話もありますが、現実を見据えたやり方が各社それぞれにあるはずです。やってみたら見えてくるものがあるでしょうし、やってみなければ分からない部分もあるはずです」

 実際にSOAによるシステム構築を進める上では、組織面の課題もある。多くの日本企業では、個々の業務アプリケーションを担当する側に人材が厚く、全体アーキテクチャ担当は人手が足りないというのが実状だ。しかしアーキテクトがいなければ、SOAを上手に作り込むことは難しい。

 澤井氏は「当社では例外的に、共通基盤担当のチームが生き残ることができました。業務アプリケーションの大規模更新を行っている最中でしたから、全体のアーキテクチャを見る人たちがいなければ困ったことになると分かっていたためです。人手は足りませんが、パートナーに恵まれたおかげで、なんとか回していけます」と言う。

 斎藤氏も、人手不足は各社共通ではないかと指摘する。

 「今は、なんとか走っていけると考えています。やはりシステムインテグレーターとの関係が大事でしょう。自社の立場を示したり、モチベーションを高めたりする工夫も必要かと思います。浪花節的な言い方になってしまいますが、メッセージを出して『夢』を示すことが、アーキテクトの仕事の一つではないかとも思いますね」

 田中氏は、SOAの考えを広めていくためには地道な作業が欠かせないと述べる。

 「人間は、新しいことをすぐに理解できません。何回となくSOAアーキテクチャの絵を描き、繰り返し説明して、言葉は悪いですが刷り込みを行いました。これが、社内外にアーキテクチャを広めていくための唯一の、地道な方法なのだと思います」

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