今年3月に企業会計基準委員会が公表した新会計基準は、2010年4月から適用が始まる運びとなった。現行の会計基準と何が異なるのか? 取り組みに向けて企業が留意すべき点とは? 有識者が解説する。
アイティメディアは11月28日、「戦略的なグループ経営管理を実現するためのマネジメントと情報システム――国際会計基準:マネジメントアプローチに求められるグループ経営管理とは」と題した経営者向けのセミナー「第6回ITmedia エグゼクティブフォーラム」を開催した。基調講演では、公認会計士でありべリングポイントのシニアマネジャーを務める伊藤久明氏が、セグメント会計基準の適用がグループ経営管理に与える影響に関して経営上の注意事項を解説した。
伊藤氏は、「日本企業は、経理・財務の対応においてQCDの3重苦にある」と語る。近年、日本企業の会計処理においては、財務統制に係る内部統制の評価と監査(Quality)、コンバージェンスに伴う会計基準変更の連続(Change)、そして東証から45日以内で開示が要請されるなど決算の早期化(Delivery)と、同時に3つの厳しい要求が突きつけられている。
「内部統制で精度を上げろ、決算早期化だから迅速に出せ、というのは、まるでアクセルとブレーキを両方踏み込めというような無茶な要求。さらに会計基準の変更に合わせて対応せよというのだから、路面も大変な悪路ということになる。そんな中で、2010年度から新会計基準で適用されるセグメント開示は、単に経理部門だけの問題ではなく、グループ全体の問題として取り組まねばならない厄介な課題だ」(伊藤氏)
2010年度からの会計基準は、これまでとどのように違うのか。今回の日本のセグメント会計基準は、「マネジメントアプローチ」と呼ばれるもので、米国では1997年に導入されている。そのため、米国の株式市場に上場している企業はすでに対応している。伊藤氏は、一例としてソニーの会計報告セグメントを挙げ、1997年3月期まで3つのセグメントだったのが、1998年3月期では6つのセグメントとしていることを示した。
このセグメントは、旧基準では「製品」を識別するものとなっていたが、新基準では内部管理単位である「事業セグメント」となるため、区分が変わってくるのだ。これは、「経営上の意思決定を行い、業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎」とする、マネジメントアプローチの考え方に基づいたものである。
ただし、あまりに多くのセグメントを持つ企業では細分化されすぎてしまうこともあり、財務諸表利用者が適切に判断できるよう、複数セグメントを集約したり、規模の小さなセグメントであれば報告する必要がないといった規定が設けられている。とはいえ、全般的には、セグメントの数は旧基準より増えるケースがほとんどだろう。
また、新基準では、セグメント別に開示が必須とされる項目は利益と資産の2つに限られている。旧基準で必須だった、外部顧客への売上高やセグメント間内部売上高・振替高、減価償却費などといった項目は必須とされていない。ただし、セグメントの利益・資産を算出するための、企業の内部管理情報で用いられる基礎項目について開示することが求められる。さらに、セグメント別に開示する金額の会計方針についても、財務会計を基礎とする旧基準とは異なり、新基準では内部報告で用いる金額、すなわち管理会計を基礎とする点も注意が必要だ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授