「IT部門の再生工場を目指す」――ITR内山社長、2009年の展望「2009 逆風に立ち向かう企業」アイ・ティ・アール(1/2 ページ)

金融危機の影響を避けられない2009年、企業のIT投資は縮小傾向になるとITRの内山社長は話す。「新規投資ができない時こそ、人材育成に労力を注ぐべき」だという。

» 2009年01月01日 00時00分 公開
[聞き手:杉浦知子,ITmedia]

 「大型プロジェクトの先送りや縮小を前提として2009年の予算を計画している企業が多い」――IT関連の調査、コンサルティングサービスなどを手掛けるアイ・ティ・アールの内山悟志社長は、2009年のIT投資をこう分析する。金融危機の影響を受けて、企業ではIT投資を縮小するだろうと予測をする内山氏に、この時代だからこそできることは何か、企業は何に重点的に投資をすべきか、アナリストの視点から話を聞いた。

ITR 内山悟志社長

ITmedia 2008年を振り返ってみると、どのような年でしたか?

内山 2008年は、内部統制の準備を整えて実行に移した段階です。これから内部統制も新しい局面を迎えるでしょう。実際に1年やってきて気付いた問題点が見えてくるころですし、2年目以降は安定稼働させなければなりません。初年度は「内部統制プロジェクト」のように運営してきましたが、安定稼働させるにあたって人手が足りなくなってくるはずです。そこで、ITを使って自動化や効率化をしていく段階に入ってきたと思います。

 一方、リスクやコンプライアンスについては、悩める1年だったのではないでしょうか。法対応や社会責任系の投資にはITが必要になり、災害対策、情報セキュリティなどの投資に対してどれだけ本気でお金をかけるべきかといった計画を立てる検討がなされた状況といえます。

 大手企業を中心にERPを導入するなどして基本的な情報基盤が整い、2008年はそれを活用する動きが見られるだろうと期待されていました。計画も立てられていましたが、実際に期が始まって投資案件が実行されていく中で、正直手が回らなかったというのが2008年でした。お金をかけたIT投資、システムの構築や導入というのは少し勢いが落ちたように見受けられます。

ITmedia 2009年のIT投資は、どのような傾向が予想されるでしょうか?

内山 金融危機の煽りを受けることは避けられないでしょう。米Lehman Brothers破綻の直後にITRが監修した投資に関する調査では、IT投資の抑制傾向が如実に現れました。

 2000年代前半までは、景気が悪くても翌年くらいまでは影響が及ばず、1年後や2年後くらいに投資を減らすという傾向がありました。当時のIT部門長は、来期の予算までは把握できていたので来期の予想が翌年の実績とほぼ一致していたんですね。

 2005年あたりから財政状況が不安定になってきて、特に「来年は大丈夫だろう」「来年はちょっと厳しいだろう」と見た予測が翌年はまったく当たらなくなってきたんです。ビジネスに求められるレベルが、ITの成長よりも速くなってきているのが原因です。期の途中で新しいプロジェクトが立ち上がったり、景気が悪くなってプロジェクトが先送りになったりして、ズレが生じた結果です。

 最近さらに不景気になり、不景気とIT投資の縮小が情報システム部門を直撃して、昨今のリーマンショックや世界の金融危機の影響を受けています。それを受けて企業は、「2009年は厳しい」という前提で投資計画を立てているのではないでしょうか。大型プロジェクトの先送りや縮小を検討している企業が多いでしょう。

ITmedia 2008年、情報システム部門には組織としてどのような動きが見られましたか?

内山 組織の見直しをした企業が多くありました。グローバル対応や国内グループ対応が求められる中、本社だけでなく国内グループ企業や海外の拠点にまで目を向けて、ERPの導入や情報共有基盤の構築といった戦略を立てなければならなくなり、情報システム部門に求められる役割や業務が変化してきました。

 しかし、人員の問題や情報システム部門を子会社にアウトソーシングしている企業には、その変化に対応できないこと多くあったようです。そこで、組織を見直して、情報システム子会社の体制や社内の情報システム部門の再構築をした企業がありました。

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