体感型研修で“理論力”+“実践力”を養成する――日立コンサルティング社員教育の現場から(2/3 ページ)

» 2009年01月22日 08時00分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

質問力を大きく左右する仮説検証力

 日立コンサルティングでは現在、ロールプレイング型の研修として、(1)基礎力の養成、(2)リーダーシップの養成、(3)ITで業務改革を推し進めるスキルの養成、の3つの研修プログラムを用意。毎年2〜3回、社員を選抜した上で研修を実施している。その内容は、主に入社2〜5年目の若手社員向けの基礎研修に関して簡単に説明すると、経営危機に陥った架空の企業を再建するというストーリーの下、社員8人で構成される4つのチームが、戦略、税務、人事、生産オペレーションといった各分野の課題とその解決策の策定を分担して行い、クライアント企業へのヒアリングなどを通じて最終的にコンサルティング提案するまでを約1週間かけて体験するものだ。

 こう表現すると簡単そうにも思えるが、あえて社員を苦しませるための仕掛けが至るところに仕込まれており、改善提案にこぎつけるまでの道のりは極めて険しい。

 例えば、経営課題を探り当てるために行うヒアリング一つとっても、将来の事業の柱に据えたい商品を見極めるために「A、B、C、Dの4つの商品のうち、どれを一番に売っていきたいか」と単純に尋ねたならば、「営業としてはどれも売っていきたい。優先順位はつけられない」と企業の担当者役を務める講師に切り返されてしまう。ヒアリング対象となる企業担当者の中には、自身の威厳を保ちたいためにコンサルタントを威嚇する相手もおり、情報を入手するどころかコミュニケーションすら思うように取ることができないケースもある。このことから、社員は自身の質問力の低さなどコンサルタントとして未熟な部分を痛感させられるわけだ。

ロールプレイングの様子。顧客役を務める講師にも演技力が求められる ロールプレイングの様子。顧客役を務める講師にも演技力が求められる

 もちろん、ロールプレイングの後には講師によって改善すべきポイントが示される。例えば、質問力については仮説検証能力が大きなポイントになるという。前述の商品の見極めについて、事前に調査を行っていれば、市場の伸び率がA、B、C、Dの順に伸びているものの、Aの分野では競合が多く、逆にBの分野では高いシェアを誇っていることが把握できる。この前提から考えれば、BはAより将来的により大きな売り上げが期待できる。事前にこうした仮説を立てることができれば、より具体的に質問を行え、ヒアリング作業を仮説検証の場にすることが可能。その結果、より踏み込んだ質問を行えるようになるわけだ。

 「質問力を高めるためには、やはり現場で場数を踏むことが大切だ。だが、そのやり方だと成長に時間がかかり、場合によっては質問力を養う前に犯した失敗から立ち直れなくなることもある。そこで、短期間に集中して研修を行うことで、社員の意識変革を図り、その人なりの質問力を養成しようとしているのだ」(芦辺氏)

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