体感型研修で“理論力”+“実践力”を養成する――日立コンサルティング社員教育の現場から(1/3 ページ)

社員研修といえば、多くの人は講師を前に知識の習得に励む、いわゆる“座学”的なものを思い浮かべるのではあるまいか。だが、知識は仕事に応用できて初めて価値を生む。この点を踏まえて日立コンサルティングが導入したのが、本番さながらの実践的な研修だ。

» 2009年01月22日 08時00分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

ロールプレイングで自身の限界を知る

 コンサルティングはコンサルタントのスキルによってその良しあしが大きく左右されるだけに、コンサルティング会社にとって人材育成は極めて大きな経営課題と位置付けられる。そこで、各社は社員研修の拡充を通じて、社員のスキルの底上げに長らく取り組んできた。

 そうした中、ほかのコンサルティング会社ではあまり類を見ない社員研修で注目を集めているのが日立コンサルティングだ。その特長は、研修で一般的に行われている座学的な要素を極力省き、徹底的にロールプレイングを繰り返すことによって、コンサルティングの業務現場を体感できる内容になっている点にある。同社の取締役でマネージングディレクターを務める芦辺洋司氏はプログラムの狙いをこう説明する。

 「コンサルティング手法論などの知識を深めることは確かに大事。だが、仮説検証などの基本動作は書物からでも得ることができる。コンサルタントとして重要なのは、知っている知識を現場で実践できるか否か。そこで、社員に自分がどこまで通用するのかを知ってもらうため、現場を体感できることに重きを置いた研修を開発したのだ」(芦辺氏)

研修により“一体感”の醸成も可能に

 そもそも日立コンサルティングがこの研修を開発した背景には、組織が急拡大しているという事情があったという。同社は日立製作所のビジネスソリューション本部から独立する形で2002年にグローバルコンサルティングファームとして設立(現在の社名は2006年4月から)。以来、外部から人材を積極的に取り込むことで、業容を拡大させるとともに、社員数は発足時の約300名から今では700名にまで急増を遂げている。今後も精力的に社員を増やし、2009年度に1000名、いずれは1500〜2000名体制を目指すという。

 ただし、これほど人材が急増したことで、そのことに起因する課題がいくつか散見されるようになったという。中でも問題視されたのが、入社間もない社員が多いことから、同社の企業文化が薄らいでしまったこと、社員間のコミュニケーションが疎くなる傾向があったことの2つである。同社ではこれらの問題を解決する上で、社員同士が腹を割って話せる場の整備が不可欠と判断する。加えてコンサル会社にとって個々の社員の能力を高めることが必要であることを踏まえ、体感型の研修プログラムを作り上げたのだ。

顧客へのコンサルティング提案に向けて議論を重ねる 顧客へのコンサルティング提案に向けて議論を重ねる

 「組織としての一体感を醸成するためには、社員の間でとことん話し合い、お互いの考え方の溝を埋める必要がある。加えて、コンサルティングでは、たとえ同じ問題であったとしても、いくつもの“解”が考えられ、よりよい提案をするためにも、コンサルタントには仮説検証のための高い思考力が求められる。実践的なロールプレイングを通じ、社員同士で徹底的に話し合わせなければ解決できないような課題を与えているのは、まさにその2つに対応を図るためなのだ」(芦辺氏)

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