松下幸之助はかつて「好況よし、不況またよし。不況は改善、発展への好機なのだ」と述べた。現在の不況をチャンスととらえる発想がリーダーには不可欠だという。
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100年に1度の経済危機と言われる中、連日、派遣社員や契約社員の解雇など、暗いニュースばかりが流れている。そんな厳しい時代だからこそ、ピンチをチャンスとしてとらえる、その姿勢が大切だ。
昨年12月12日の漢字の日、京都の清水寺で2008年の世相を表す漢字が発表され、「変」という字が選ばれた。前回触れたオバマ氏は、Change(変化)という言葉を掲げて、アメリカ合衆国大統領選挙に勝利した。現在のような未曾有の危機の時代においては、変化し続け、このピンチをチャンスに変えていく発想を持つことが何よりも求められている。
ピーター・ドラッカーは『ドラッカー365の金言』(ダイヤモンド社)で次のように述べている。
「変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つことである。変化はリスクに満ち、悪戦苦闘を強いられる。急激な構造変化の時代を生き残れるのは、チェンジ・リーダーとなるものだけである。チェンジ・リーダーとなるためには、変化を脅威ではなくチャンスとしてとらえなければならない。自ら未来をつくることにはリスクが伴う。しかし、自ら未来をつくろうとしないことの方がリスクは大きい。自ら未来をつくろうとせずに成功することはない」
日本企業の中には、厳しい経済状況をチャンスととらえ、国外に勝負に出た企業も数多くある。例えば、野村證券が経営破たんしたリーマン・ブラザーズの欧州・中東地域およびアジア・パシフィック地域の部門を買収したことが記憶に新しいだろう。この買収で野村證券は、経験豊富で有能な人材を確保するとともに、海外におけるビジネス展開をより強化することとなった。また、三菱UFJフィナンシャル・グループは、モルガン・スタンレーに対して90億ドルの資本注入を行った。
製薬業界では、塩野義製薬が出遅れていた米国での販売体制を整えるために米Sciele Pharmaを、IT業界でもNECが通信事業者向けのソフトを開発する米NetCracker Technologyを、NTTデータが独BMWのシステム子会社である独Cirquentをそれぞれ買収している。
国内に目を向けても、発展を遂げている企業が数多くある。2009年1月7日の日本経済新聞夕刊では、2、3月決算の企業で、売上高と経常利益を2ケタ増やし、かつ最高益を更新する見通しの上場企業が184社に上ると紹介されている。主な企業は次の通りである。
社名 | 経常利益 |
---|---|
任天堂(ゲーム機器) | 5,800(32) |
ヤマダ電機(家電) | 916(12) |
コナミ(ゲームソフト) | 445(36) |
ニトリ※(家具販売) | 295(11) |
エービーシー・マート(靴販売) | 211(12) |
ポイント※(カジュアル衣料) | 149(14) |
ぐるなび(飲食店検索サイト) | 37(38) |
カカクコム(価格比較サイト) | 33(74) |
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明治学院大学 経済学部准教授