ギャップだらけの組織を救う「ストーリーテラー」であれタスクチームのススメ(4)(4/4 ページ)

» 2009年04月25日 08時30分 公開
[永井孝尚ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

4-3 ストーリー作り

 アクションプランを策定するためには、原因分析だけでは不十分だ。原因分析は必要なプロセスであるが、原因分析の結果を単純に収集し、それぞれの原因に対して個別にアクションプランを作っても意味がない。一貫性がない場当たり的な対策になってしまい、その後のタスクチームの進行が難航するからだ。結果として、膨大な時間をかけても、成果に結び付けられない場合が多い。

 ここで求められるのが「ストーリー作り」だ。タスクチームが何を目指して動き、どのような成果を上げるのかをメンバー全員で理解するために、シンプルなストーリーを立ててみるといい。問題と原因を分析した上で全体を貫くストーリーを考える。その上で仮説を立て、問題や原因を分類していくのだ。

 例えば、組織が縦割り構造になっていて、顧客の要望に柔軟に対応できていないという原因分析が散見される場合は、「顧客の要望をくみ取り、開発から営業までを“一気通貫”で行う組織に変革する」というストーリーを作る。これに従って具体的な仮説を立てる。

 このストーリーを基に「セグメントAの顧客グループに対して、営業/開発/技術部門をxx人規模で再編成し、最適化した業務プロセスを構築する」という仮説を作り、当初の問題をどう解決するかを考えてみる。

 ここで注意点がある。現状および原因の分析に手間がかかるからといって、これらを省略していきなりストーリー作りに取りかからないことだ。繰り返すが、現状と原因の分析が不十分だと、現実とかい離した「現状肯定型」のストーリーが生まれがちだ。これでは、タスクチームが本来持っている真価が発揮されない。

 個別の問題を分析して対応策を積み上げる方法は、様々な観察結果から結論を導く「帰納的方法」である。一方、ストーリー作りによるシナリオ策定は理論や定説を当てはめて結論を導く「演繹的方法」といえる。両者は排他的なものではなく、お互いに補完しあうものとして考え、活用したい。

 次回はアクションプランや進ちょく管理の方法を決める方法を取りあげる。

(注)本書に掲載された内容は永井孝尚個人の見解であり、必ずしも勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。

著者プロフィール:永井孝尚(ながいたかひさ)

永井孝尚

日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア事業部にて、マーケティングマネジャーとして、ソフトウェア事業戦略を担当。グローバル企業の中で、グローバル統合の強みを生かしつつ、いかに日本に根ざしたマーケティング戦略を立てて実践するのか、格闘する日々を送っている。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「永井孝尚のMM21」で、企業におけるマーケティング、ビジネススキル、グローバルコミュニケーション、及び個人のライフワークについて執筆中。著書に「戦略プロフェッショナルの心得」がある。


過去のニュース一覧はこちら

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆