【第23回】経営にとって「あいさつ」や「掃除」は小さなことかミドルが経営を変える(1/2 ページ)

最近の小中学生は学校でトイレ掃除をしないそうだ。かたや、社長自ら率先して社内外の掃除に励む会社もある。

» 2009年07月03日 11時45分 公開
[吉村典久(和歌山大学),ITmedia]

 最近、小中学校ではトイレ掃除を外部の業者に委託しているケースがあるという。トイレ関連企業が設立した「学校のトイレ研究会」の調査(2008年)によると、全国の小学校の中で5%は生徒以外が清掃を担当している。従って、自宅を含めトイレ掃除をまったく経験したことがない若者もいるそうだ。

 なぜ生徒がトイレ掃除をしないのか。掃除に時間を割くなら早く帰宅させて塾に向かわせたいと保護者が考えているのか、それとも、ほかに理由があるのか分からないが、釈然としないものが残る。

あいさつを正しくできる相撲部屋

 「この会社の業績は良いに違いない」と直感的に思わせる会社がある。例えば、従業員のあいさつが素晴らしい会社である。皆が感じの良いあいさつをしてくれる会社は無条件に「良い会社」だと判断してしまう。この判断基準はよく耳にするものであり、首肯する読者も多いと思う。知り合いのビジネスマンが「会社の中に入らなくても、経営状況は分かる。入口にいる守衛さんのあいさつひとつで判断できる。素晴らしい会社の守衛さんのあいさつは元気一杯である」と話していたが、同席したビジネスマン全員が「確かに」と肯いていた。

 「日本経済新聞」6月16日付朝刊のスポーツ面に、「東関親方定年最後の指導、『正しいあいさつを』」と題した記事が掲載されていた。掲載前日に定年を迎えた大相撲の東関親方 (元関脇・高見山)にまつわる記事である。そこには、次のような記述があった。


「大相撲の東関親方(元関脇高見山、65)が同日、師匠として最後のけいこ指導を行った。部屋を継ぐ小野川親方(元幕内潮丸)、幕内高見盛ら弟子に見送られた東関親方は『あいさつを正しくできる部屋、強い力士をつくることを祈っています』」と笑顔で角界を去った」


 これが部屋での最後の言葉である。心底、そして長年、東関親方が大切に思ってきたことだろう。ただし、「あいさつを正しくできる」ことと「強い力士」が育つことの間に、明確な因果関係はあるのだろうか。言葉通りにあいさつを正しくできるような真面目、素直な力士であれば、親方の指導にも素直に耳を傾け、強い力士に育ちやすいのかもしれない。スポーツの中でも格闘技の色合いが強い角界では、そうした性格が力士として大成するのだろう。

 具体的かつ科学的なけいこ方法などであれば、相当の因果関係を認めることができるのだが、いわゆる精神論的なものは簡単には認め難い。しかし「何かある」と思ってしまうのである。

 東関部屋のけいこ場の入口には、親方の署名入りで「東関部屋十の心」なる文言が掲げられているそうだ。「はいという 素直な心」から始まり、「嘘をつくなという 正直な心」で締めくくられている10カ条である。


東関部屋 十の心

一、おはようという 親愛の心

二、はいという 素直な心

三、すみませんという 反省の心

四、どうぞという 献上の心

五、私がしますという 奉仕の心

六、ありがとうという 感謝の心

七、おかげさまでという 謙虚な心

八、お疲れさんという 労りの心

九、なにくそという 忍耐の心

十、嘘をつくなという 正直な心



 精神論と言ってしまえばそれまでだが、この10カ条を実践している会社の競争力、業績は卓越したものであると多くのビジネスマンから賛同が得られるはずだ。

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