事業部間でシナジーを生み出すことに注力している企業は、可能な限り全社的なアプローチを採用しています。こうした企業では、統合を推進し、全事業部における類似領域に注目して共通のプロセスを導入しています。また、特にデスクトップ環境、電子メール、ITセキュリティ、ERPなどの全社的なアプリケーションをはじめとするITインフラの要素において、トップダウンで標準準拠を浸透させています。
MITSloanとGartnerEXPの共同調査は、高いITガバナンス成果を上げているシナジー志向の企業における他より効果的なガバナンススタイルを見出しています。例えば、IT基本原則やIT投資/優先順位決定の領域では、多くの場合、二頭制または連邦制のスタイルによって事業部門のトップレベルの関与を実現しています。また、ITインフラストラクチャやITアーキテクチャに関する意思決定においては、ハイレベルのビジネス・エグゼクティブの関与がITに関するトップダウンの基盤となっています。
シナジー志向の企業は、統合を重視するため、全社的なスタイルを必要とします。全社的な意思決定プロセスや優先順位が明確であるほど、統合は促進されます。エグゼクティブが関与してトップ主導のITガバナンスを確立し、ハイレベルのリレーションシップマネジャーの働きによってIT部門と各事業部を結び付けます。シナジーは、IT/ビジネス・リレーションシップ・マネジャーの働きによっても高められるということなのです。CIO直轄のこの役割は、IT部門と事業部門間の良好なリレーションシップの構築を目標として、事業部門に対しても一定の責任を担っています。
シナジー志向の企業は、ビジネス・ガバナンスのスタイルおよびメカニズムとITガバナンスのスタイルおよびメカニズムが連動するように設定することで、「1つの企業」としての強みを発揮させています。
これを実現するために重要なのは「トップレベル」です。ビジネスの方向性を設定する事業部門のリーダーが、主要なIT意思決定委員会にも出席します。IT部門と事業部門のリレーションシップはハイレベルで構築し、2者間の一体化を図ります。そして、ITガバナンスに関する伝達は、通常トップを、多くの場合、IT委員会のメンバーであるビジネス・エグゼクティブを起点としています。
図3は、シナジー志向の企業での実際のITガバナンスマトリクスです。ガバナンス・メカニズムにおいて、可能な限り全社的な一体化を目指そうとしているのがわかります。また、リレーションシップマネジャーもメカニズムの一つに組み込まれています。
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授