視点2: 顧客基盤の実質的な価値はどの程度あるのか?
大企業の情報システム子会社など、「顧客を買う」という目的で、技術的にはさしたる相乗効果がないシステムベンダーの買収を正当化するケースも散見されますが、ここでも注意が必要です。
そもそもエンドユーザーとベンダー、元請ベンダーと下請ベンダーの取引関係は、経営トップ同士の人脈や、特定の営業幹部の存在など、どちらかといえばウェットな人間関係の影響が無視できません。
特に中堅・中小のシステムベンダーの場合の売り上げは、顧客あるいは案件あたり数億円といったものの集積で構成されているのが実態でしょう。1つの案件が数十億円を超える場合には企業対企業の関係が不可欠ですが、数億円といった規模の顧客・案件では、個人的な関係が入り込む余地が非常に大きくなってきます。
従って、競合他社から見て技術的に余程の障壁がない限り、経営者や資本関係の異動は、従来の顧客基盤に対して何らかの影響を与えると考えた方がいいのです。
対象会社の顧客基盤のうち、どの顧客は維持される可能性が高く、どの顧客は流出のリスクが高いのかを個別に評価していくことで、実質的な顧客基盤の価値を正しく見積もることが必要になるのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授