ベストチームに向けてシステムコーチはこうかかわるベストチームとは何か(2/3 ページ)

» 2010年07月02日 09時40分 公開
[島村剛, 森川有理(CRRジャパン),ITmedia]

事例

 とある製造業A社。激しいグローバル市場における競争に立ち向かうため、全社に向けた新しい経営方針が出された。各部門はその方針に沿って部門としての経営計画に落とし込むことになった。B部長は選りすぐりのチームリーダーを集め、自部門の経営計画を立案。度重なる議論を経て、論理的に考え抜かれた経営計画は、一見非の打ち所がないと思われた。各チームリーダーは、自らのチームに対して経営計画を伝播するために意気揚々とそれぞれの現場へと戻った。

 しかし、1カ月後、部長がチームリーダーたちを招集すると、予想以上の苦戦を強いられている様子が見て取れた。理路整然とした経営計画だったはずのものが今や「絵に描いた餅」と化し、現場レベルのイノベーションは何も起こっていない。チームリーダーは責任とプレッシャーを感じ、チームから徐々に孤立すらしている。また、1カ月前と比べると明らかにリーダーたちのエネルギーレベルは落ちていた。

 部長は、ここで第三者の助けを借りるために、システムコーチを迎え入れ、チームリーダーDさんが率いるチームCに対して、システムコーチングの導入を決めた。

 システムコーチの2人は、まずチームCの現状を診断するために、4人のチームメンバーにヒアリングを開始した。

  • チームリーダーDさん 「部下にはちゃんと話はしていますよ。会議だけでなく、何度か“飲みニケーション”もしましたしね。みんな主旨には賛同してくれています。本気で現場を変えていかないと、先がないですからね。それぞれ自分の持ち場で何ができるかを考えておくように言っているのですが、なかなか答えがあがってこなくてちょっといらだっています」
  • チームメンバーEさん 「経営計画? はい、前回の定例会議でリーダーから説明は受けました。大事なことだっていうのは分かります。でも自分はずっと現場一本で来たから、なんだか雲の上の話のようで、具体的に何をしたらいいのかさっぱりイメージがわきません。正直なところ、リーダーから一方的に“あとは現場で考えてくれ”って丸投げされても実際問題困っちゃうよね。ここのところ売り上げも減り続けていて現場は毎日火の車ですから、そんなこと考えている余裕はありませんよ」
  • チームメンバーFさん 「うちのチームはそれぞれに数値目標があって、その達成に必死なんです。なんと言っても数字第一です。チームメンバーと言っても、うちのチームはあまり互いのやり方には干渉しないし、あえて連携しなくても自分の仕事はできますよ。しかも、もうすぐ人事考課の季節で、目標の達成度に応じて年度評価が決まってしまうので、ビジョンとかって悠長なことは言っていられませんよ。今のままでいいとは思わないけれど、失敗するかもしれないイノベーションにあえて踏み出そうとする気はないんじゃないかな」
  • チームメンバーGさん 「いやいや、正直わたしだけ落ちこぼれですから。目標も達成できないし、チームのみんなにこれ以上迷惑はかけられないので、毎日必死ですよ。ビジョン? そういうのは成績の良い人にお願いしたいですよね。自分は今の仕事で手一杯ですから」

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