灰塚 現在、コールセンターとWebが主力チャネルですが、店舗も出しました。店舗ではいままでとは異なる情報が入ります。対面販売なので深いコミュニケーションができ、お客様の考えをより深く理解でき、開発側へのフィードバックも内容の濃いものになります。
また、チャネルごとに購買層も異なります。例えば、Webですと買い方や年齢などが異なります。当社の平均購買年齢は40代台後半なのですが、テレビが50代、Webと店舗が30代前後など、チャネルを広げたことで顧客の年齢層が広がり、それによりこれまでとは違う角度から情報が入るようになりました。
JIMOSは、直接運営はしていないが百貨店などもコンタクトチャネルとして有している。通信販売事業者の多くが、1対1のクローズドコミュニケーションができるコールセンターやWebなどをメインチャネルとして活用することが多い。理由は顧客との密なリレーション構築ができるというマーケティング戦略だけでなく、販売コストを抑制し、その分良い商品を低価格で提供するというビジネスモデルにも依存すると思われる。
しかし通信販売事業者だからチャネルを絞り込むというモデルは、今の時代を生き抜くのに適切だろうか。まずマルチチャンネル化するメリットとデメリットを企業側の視点で整理したいと思う。
1.複数チャネルから情報が入る事でさまざまな心理の顧客行動や要望に対する変化を察知しやすくなる
2.広範囲の顧客をカバーすることによる利便性と営業効率を引き上げる
3.在庫過剰の場合のアウトレット機能、特定セグメント顧客の限定的チャネル提供などコスト削減などに活用できる
4.複数チャネルを組み合わせることで企業は特定市場に焦点を当てた活動ができ、ゆえに競争力に貢献する
1.チャネル管理コストが高騰する
2.チャネル多様化によるカニバリゼーションが発生し、顧客に混乱を与えかえって不満を増幅させてしまう
3.投資効果が見えにくい
通信販売事業者の場合、最も懸念するのがデメリット1のチャネル管理コストであろう。チャネルを絞り込んでの製品サービス提供による低価格を実現している企業にとってはビジネスの根底が崩れてしまうことになりかねない。
一方で、メリット1と4にあるように、マルチチャンネル化することでさまざまなチャネルから情報が入ることにより、多面的な情報を得ることができる。さらに、チャネルを意図的に取捨選択できるので、特定市場に特化しやすいという側面もある。
実際にJIMOSのインタビューの中でも、チャネルにより顧客の年代と心理が異なり、対面チャネルではより深いコミュニケーションが展開されることが分かった。
以上を整理すると、マルチチャンネル化する際に自社のトレードオフを明確にし、そのメリットとデメリットを認識した上で、戦略的に複数チャネルを展開することは、ビジネスモデルにかかわらずこれからの時代の競争環境には有効なツールになることが分かる。
今回の取材を通じ、JIMOSの「ヒト」を中心に据え、事業モデルより組織の強さ、顧客への熱い思いなどを重視することが、企業の競争非常にさまざまな事を学ぶ事ができた。
「企業は人なり」といわれるが、企業の成長とともになかなか実践が難しくなる概念である。しかし、創業以来「ヒト」にこだわる事業活動を継続し、実現しているJIMOSの今後のますますの変化と飛躍に新たな期待が高まる。
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森 一恵(もりかずえ)
早稲田大学大学院卒。現在同大学博士課程に在籍する傍ら、早稲田大学IT戦略研究所研究員として活動。主な研究領域は、マルチチャネルを活用した商品および販売戦略、マルチチャネルサービスマーケティング。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授