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» 2010年09月22日 08時50分 公開

生き残れない経営:日本のCEOは状況を正しくみている? いや、ずれているだけではないか (2/3)

[増岡直二郎,ITmedia]

 次に「リーダーの資質」について、「今後5年間で最も重要なリーダーの資質」として、日本CEOは「創造性」(回答比率58%)、「グローバルな志向」(42%)、「熱心さ」(37%)を挙げている。第3位で40%近くも占める「熱心さ」とは何か。高度経済成長時代で何もかも熱心にさえ取り組んでいればどうにかなった時代ならともかく、複雑さがさらに増す今時の経済環境下で、単なる「熱心さ」など何の役にも立つまい。そもそも、根底に熱心さを欠いた経営なんてあり得るのか。

 なお、誤解を生む向きもあるかもしれないので断っておくと、「熱心さ」はドラッカーが指摘する「真摯さ」とは、言うまでもなく全く異質だ。

 一方で、戦略実現のために「議論の徹底」よりも「迅速な意思決定」を重視しているCEOが、世界32%を日本47%が大きく上回るが、ここにも日本CEOの考え方の矛盾がある。まず、「迅速な意思決定」を重視するのが韓国では64%と中途半端な日本を上回るが、上記の経済環境の認識について的外れでのんきな日本のCEOに対し、予測できないと認識する将来に対して迅速な意思決定で対応しようとする韓国CEOのより厳しく賢明な姿勢が窺える。

 さらに、そもそも日本人には昔から「議論の徹底」が不足し、自己主張を遠慮し、ナアナア主義で行く欠陥がある。上記「リーダーの資質」にあるように「創造性」が最重要と日本のCEOが考えるなら、意思決定の前に充分な(もちろん、効率的な)議論を大いに尽くし、「創造性」の発掘に努めるべきではないのか。さらに、「創造性」の重視が日本CEO58%に対して韓国CEOが92%にもなるのは、日本CEOの重要視程度が疑われる。

 「リーダーの資質」のもう1つ「グローバル志向」には、日本CEOの苦悩と、同時に弱さを垣間見ることができる。最も影響を与える外部要因3つにも、日本CEOは市場の変化(78%)、グローバル化(41%)、技術革新(40%)を挙げるが、ベスト3にグローバル化を挙げるのは日本だけだ。さらに、今後5年間で「成熟市場から新興市場へのシフトが自社に影響を与える」と回答したのは、世界CEOの50%に対し、日本CEOで74%に上る。ちなみに、北米で49%、中国で48%、EUで43%となっており、日本は異常に高い。

 一方、各国のCEOの懸念として挙げているのが、北米が「大きな政府、および規制強化」、欧州が「人材不足」、中国が「グローバル思考」に対し、日本では「新興国市場への経済力のシフト」が突出している。これらと合わせて、日本CEOが「製品・サービスの価格と価値のバランス」を重要課題としていることを見ると(世界CEOで45%に対し日本で76%と、これも異常に高い)、日本CEOが円高や内需低迷、デフレ・スパイラルへの対応にかなり苦慮し、海外シフトに傾斜しようとしていることが推測される。

 この傾向は、日本経済の再生をますます遅らせる。国土も狭く資源に恵まれず、人口減少傾向が顕著であり、輸出環境が悪化し、閉塞状態に追い込まれた日本におけるCEOは、確かに新興国シフトへ傾斜していきたいのだろうが、しかし海外シフトという過去の栄光だけにいつまでも捉われずに、将来を見据えて、技術革新にもっと大きな関心を持ち、内需拡大への施策、円高対応、デフレ・スパイラル対策などについて、国に強力に要求して行くべきだし、そのための自助努力も求められる。

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