「死ぬほど考える」のは、組織のリーダーである社長の仕事です。今回はこのキーワードをもとに、CIOの役割について考えます。
わたしどもガートナーは世界規模のITリサーチ・アドバイザリー企業です。リサーチをベースにアドバイスを提供する会社というのは、さまざまな角度から行う調査の結果をアナリストが集計・分析して、その結果を提供し、収益を得ています。ということは調査能力だったり、分析能力だったり、それを伝達する能力だったりが優れていることが、企業競争力の源泉になる訳です。そして、わたしたちガートナーが、世界中のお客さまから信頼されている最大の理由が、常に中立・公正な立場で、恣意的な偏りを持たない情報・アドバイスを提供していることだと考えています。
しかし、わたしの担当するガートナーエグゼクティブプログラム(EXP) のサービスについて、一部のお客さまは、「ガートナー EXP の情報・アドバイスは、具体性に欠けていてね、わたしたちが実際に何をすれば良いのか参考にならないのだよ」「なんだか、アカデミック(学術的)過ぎて、わたしたちにはハードルが高いねぇ」とおっしゃることがあるようです。
このようなご意見に共通するキーワードがあります。1つは「具体性に欠ける」です。もう1つは「アカデミック過ぎる」というものです。わたしたちは、頂戴したご意見について、常に真剣にその真意を考えます。では、「どうすればいいのだろか。」「何をすればいいのだろうか」と。
そこで、今回は「考える」ということにフォーカスを当ててみたいと思います。
先日、大阪府にある東海バネ工業という会社の渡辺社長にお会いし、話をお伺いするチャンスがありました。同社は、バネの製造会社で、社員が80人程度の中小企業です。バネというと読者の皆さんは、どんなイメージをお持ちになるでしょうか。少なくとも、バネ単体で売られている姿を、日常生活で見かけることはありませんね。つまり、消費者向け製品ではなく、最終製品から見て部品を作っている企業だということです。
それにも関わらず、同社では、下請け仕事を一切しないで、製品の値段は自社で決めているというから驚きです。多品種微量生産を貫き通し、他の会社がやらないような手間がかかる面倒な領域を得意分野とされているのだそうです。大量生産・大量販売により売上を大きくし、それを「企業成長」だと吹聴しているほとんどの企業の経営者にとっては、目から鱗が落ちるような話をお聞きできました。
「経済が右肩上がりで成長期ならば、どんな企業でもそれなりに成長できたでしょう。しかし、日本経済そのものが縮小するならば、右肩上がりの売り上げ上昇や利益向上だけが、企業の目指す方向でしょうか」
渡辺社長は、現在の多くの企業経営者が言う「成長」や「競争優位」という言葉に疑問を感じざるを得ないと話してくださいました。
渡辺社長からの話の中で、特にわたしの心の琴線に触れたのは、「経営に秘策も裏技もありません。ただ一点、社員のモチベーションをあげるだけです」という言葉でした。2008年の後半に顕在化した「世界同時金融危機」の時に、色々な評論家や経済学者、経営学者が異口同音に「これまでの行き過ぎた米国型資本主義経済は終焉を迎えた。次代の新たなる資本主義経済を模索しなければならない」と言いました。
これには、わたしも同感でした。そして、次代の資本主義経済の考え方の1つに「社員を大切にする」ことにフォーカスが当たるだろうと予感していました。2009年からは、日本でのエグゼクティブ プログラムのサービス提供の考え方を、利益第一主義では無く「社員を大切にする」「お客さま主義」に路線変更してきました。「大阪にも、このような経営者が、いらっしゃたのだなぁ。しかも、もう何十年も社員のことを一生懸命に考えて経営をされているのだな」と感激しておりましたら、さらに凄いことをおっしゃいました。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授