「モチベーションをあげるための正解などは、存在せず、ただ、会社の歴史や風土、社員のレベル、提供している商品や顧客、全ての経営資源をベースに“死ぬほど”考えたら見えてくるのではないでしょうか」と。
いやあ、素晴らしいです、わたしは感服しました。“死ぬほど考えたら”と、本気で語られたのが何と言っても素晴らしいです。渡辺社長は、間違いなく本物の社長です。社員のモチベーションをあげるために、『死ぬほど考える』のは、組織のリーダーである社長の仕事ですから。
米国には24/7(twenty four - seven) という言葉がありますが、1日のうち24時間、1週間のうち7日間を全てという意味で、日本語で言えば「四六時中」という意味に捉えれば良いでしょう。米国のCIOは、24/7で「経営とITを融合させる」ことを考えているそうです。文字通り、『死ぬほど考えて』いるということでしょう。経営者の一人として、企業経営に責任を持ち、経営資源の一つとしての情報資源の最高責任者として、ITサイドから『死ぬほど考えて』いるのがCIOという訳です。そして、わたしたちガートナー エグゼクティブ プログラムは、こういうCIOの重責を軽減するために開発されたサービスです。
このコラムをお読みいただいている皆さまはいかがですか。現在、経営職に就いている方、『死ぬほど考えて』いますか?
普段から過去からの実績をそのまま受け入れ、過去のトレンドが導き出す常識を疑わない、何も疑問に思わない人は、考えることができません。でも、勘違いしないでください、それは「悪いこと」ではありません。少なくとも人の上に立って仕事をしなければ、大きな問題にはなりません。しかし、経営者になったら、社長ではなくても、『死ぬほど考える』ことが必要になります。そして、残念なことに、殆どの方は、白紙の状態で何かを考えることは不可能です。
そこで、同業・異業種の企業事例を取り入れたり、リサーチ企業の分析を入手したり、考えるための「種」というか「ヒント」を入手すれば、課題解決のために『死ぬほど考える』ことが可能になるのです。先述の渡辺社長も先代から経営を引き継ぎ、「この先の成長が難しい」と気づいたとき、海外の同業者を訪ねあるいたそうです。死ぬほど考えているCIOに、「種」や「ヒント」をお届けし、親身になって一緒に考えることが、わたしに求められるミッション(使命)だと考えています。こんなことを言っていると、読者の皆さんからも「ガートナーなら、回答を示せ!」という声が聞こえてきそうですが、わたしたちは、回答を示すことができません。
これも渡辺社長の話からですが” 会社の歴史や風土、社員のレベル、提供している商品や顧客、全ての経営資源をベースにして考える”という基盤部分が、わたしども第三者の立場からでは、勘案できないからです。これら全てを勘案し、課題解決できるからこそ、経営者は、経営職に抜擢され、他の一般職員よりも高い経済処遇を受けられているのですよね。経営者の仕事とは『死ぬほど考える』こと。つまり、今回のコラムの表題にある「自分がすべきことは、自分で考えて自分で決めなければならない」ということです。
仕事柄、多くのCIOと話す機会がありますが、残念ながら自分で考え、自分で決めるという本来の仕事を放棄して、上手くいかないことを、他人のせいにしている方も少なくありません。上位役職になればなるほど、他者から意見を言ってもらえることが少なくなりますから、本当に注意が必要ですね。
さて、今回は、コラムの中で少し宣伝をさせてください。来る10月25日から27日に、毎年恒例になりましたGartner Symposium/ITxpo 2010が東京・お台場で開催されます。26日の夕方から併催される、わたしが主催する「EXP ジャパンセミナー」に前述の東海バネ工業の渡辺良機社長が登壇されます。もし、このコラムをご講読されている経営者の方で、本セミナーに出席してみたいと、お感じになった方は、japan.exp@gartner.com までご連絡ください。
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授