一橋大の米倉氏――「若手技術者よ、Twitterをしている場合ではない」(4/4 ページ)

» 2010年12月09日 08時00分 公開
[大西高弘,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

アジア各地に広がるフロンティアへ

 米倉氏自身、アジア各地を訪れ、さまざまなビジネスに触れている。中国で学生たちとコミュニケーションし、インドのタタ自動車で2000ドルの自動車に乗り、ベトナムで日本製バイクの浸透ぶりを実感し、バングラデシュでグラミン銀行の取り組みをつぶさに見てきたといった具合だ。

 「貧しい女性を中心に低額の融資を行い、経済的な自立を助けるグラミン銀行の取り組みを見させてもらったとき、体中が熱くなった。わくわくしてきました。日本から社会人の学生を連れて視察をしにいったとき、グラミン銀行のグループ会社が行っている太陽光発電パネルの貸し出しサービス事業が話題になりました。その時学生たちは『今はいいけれどそのうち発展すれば大きな発電所が必要になる』と言っていました。確かにそういう側面もあるでしょう。しかし1平方メートル程度の太陽光集光パネルで動く家電製品を開発する、という分野も大きなフロンティアではないでしょうか。そして日本企業こそそのフロンティアに挑戦する最も強力なプレーヤーではないでしょうか」(米倉氏)

 そのほか、米倉氏は近い将来日本以上に少子高齢化社会になる中国市場に、日本のロボット技術は大いに生かせる、と話す。ペットロボットは孤独な老人をウォッチし続け、安全を確保するのに役立つし、体に装着し重い荷物を軽々と持ち上げることができるロボットスーツなども介護に利用できる。米倉氏は日本人の特徴として、「ヒューマンインテリジェンスをクオリティオブライフに結び付ける能力」を挙げる。技術や知恵を生活に生かしていく発想をもっと磨いていくべきということなのだろう。自らの強みを知り、足りない部分を補う努力をすれば、底が知れない巨大なアジア市場も恐れるに足りずだ。

 米倉氏は、最近日本の米国への留学生が減少し続けていることに懸念を示す。そしてこう締めくくった。

 「米国に限らず、外へ出ていこう、何かを吸収しようという意欲が低下しているのではないか。3D映画を見て、ハイボールを飲んで、ツイッターばかりしている。最近の人気商品になぞらえるとそんな若者が増えているのかもしれない。しかしそんなことしている場合じゃない。特に若いエンジニアはどんどん海外に出るべきだ。タタの自動車に実際に乗ってみてください。どこにフロンティアがあるのか、分かるはずです」

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆