クライシス・コミュニケーション海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

» 2010年12月22日 17時39分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
エグゼクティブブックサマリー

危機は訪れる! その時の対応とは?

 『どの企業にも危機的状況は必ず訪れます。それも、通常、最悪のタイミングでやってきます。危機は、世間の注目を集め、通常の活動を中断させ、きちんと調整した対応を必要とし、ビジネスを脅かします。数多くの破壊的出来事の1つとして発生する場合もあります。よって、企業は、最悪の危機的状況に対応する準備を整えておかなければなりません。これはとても困難なことです。なぜなら、危機的状況の中、効果的でなおかつ信頼が得られる方法で、従業員や利害関係者、世間とコミュニケーションを図ることは簡単ではないからです。それを実行するためには、企業の広報担当者は事前に危機が発生した時の完璧な対処計画を立てることで、非常事態に備える必要があります』

 企業の危機管理能力の高さは、それが充分に準備されている場合に限って、証明できます。さまざまな事例を見ていて、速やかに対応できる組織と、そうでない組織とでは、雲泥の差が出るのです。

 『もし危機的状況が企業のビジネスや製品に特に関連している場合、企業に対し厳しい目が向けられる可能性があることに注意してください。自然災害への対処法すら、組織の評判を上げたり下げたりできます。危機的状況そのものがもたらす影響に対する効果的な対策以外に、企業が管理すべき最も大切なものはメッセージです。危機は情報の空白を生みます。企業がそれを埋められるよう、広報責任者はイニシアティブを取る必要があります。それができなければ、企業にダメージを与えたいと思っている誰かにたきつけられたメディアによって、その役割を奪われてしまいます。早急に招集できる危機対策チームを編成しておくことが大切です。また、世間や従業員、利害関係者に組織が情報を伝える方法を示す手順を確立してください。情報伝達の対象者、ツール、メッセージを選定し、管理してください』

 企業が危機的な状況に陥った時、効果的な対策が求められることは当然であり、さらに一躍注目度を高めた企業から発せられるメッセージは重要な関心事となります。ですので、シミレーションなどを行い、実際にこういった事象が起こった時に、どんなメッセージをどういった経由で発信するべきか? という具体的なところまで準備しておく必要性があります。

 『企業のリスクマネジャーはかつて保険に関する事項に最も精通していましたが、今は数多くのシナリオに対処できなければなりません。リスクや、事故による汚染や企業窃盗からリコールやブランドへの悪影響までのあらゆる種類の財政面および実務面での弊害による企業の脆弱性を調査する必要があります。広報責任者、およびPR担当者あるいはコンサルタントはリスクマネジャーと連携し露出を最小限に抑え、企業の名誉やイメージを守らなければなりません。危機的状況下での否定的なメディアからの注目は、企業の評判や世間のイメージを損なわせる可能性があります。

 しかし、それでも企業はそのような状況でも生き残れますし、さらに強く成長する事も出来ます。企業が危機的状況の中でも生き残っていけるかどうかは、計画を立て積極的にコミュニケーションを取る能力にかかっています。危機によって否定的な論評が生まれた場合、早急に次の手順を踏んでください。

  • 主な顧客に調査を行い、ダメージの範囲を明確にする
  • 企業の評判を回復させることのできる方針を決める。例えば、従業員の士気を高めたり、マーケットシェアを再構築したりなど
  • 情報伝達の対象を中心的な支持者に定める
  • 広告やPRを使って企業のイメージを回復する。その結果を測定する』

 弱っている企業をさらに傷めつけようとする敵は多くいますが、そのような逆境の中でも正しい対策を取ることができれば、それをバネにしてさらに成長することも不可能ではありません。リスクマネジャーや広報担当者は「ピンチをチャンスに変える」くらいの度量がほしいところです。

 『肯定的なイメージはどの企業の戦略にとっても必要不可欠な要素です。いかなる危機的状況の中でも最も価値があるため、危機が発生するずっと以前に企業は自社の評判を管理することに投資していなければなりません。もちろん、肯定的なイメージは際立った競争優位性を与えてくれるものでもあります。肯定的なイメージを得るためには、企業は信頼性、専門知識、責任、称賛に値する価値観を世間に伝える必要があります。

 また「社会的考慮」を全ての活動に取り入れなければなりません。ビジネス著者であるチャールズ・フォンブラン氏は、肯定的なイメージを持つ企業は「物事を正しい方法で行うだけでなく正しいことをする」と述べています。企業は戦略的で、世間が自分たちをどのように認識しているかについて洞察力を持つ必要があります。重要な企業イメージを得るための「戦略的ロードマップ」を作る必要があるのです』

 企業は広い社会性を踏まえた自社の肯定的なイメージを築き上げていることが必要ですが、それは危機的な状況下に関わらず、順調な成長を遂げている間でも必要な努力だと言えます。

Copyright© 2014 エグゼクティブブックサマリー All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆