2003年に米Googleの副社長および日本法人社長に就任、2009年には日本法人の名誉会長となった村上氏。日本法人のトップを託されるに際して求められたことが、いくつかあるという。
「その1つは、『仕事は若い人たちに任せておけ。我々がやってきたのと同じようなミステイクをやらないようウォッチしておけばいい』、というもの」(村上氏)
また、人材の採用に関しては『あなたより優秀な人を』と託された。少数精鋭に徹するというポリシーである。自分より優秀な人材を採用していって、その部下をどのようにしてマネージするのだろうか。
「なにしろ、『どうしましようか』と相談されても分からない。相談されたとしても、『あなたより詳しい人はいない。あなたがそう思うなら、それでいい』と回答する。ある種の“放し飼い”だ」(村上氏)
優秀な人材を“放し飼い”にする。その表現には、下手をすれば混乱を招いたり、組織の暴走に陥ってしまわないかという不安も伴うが、実際にはそうなっていない。それは、「Googleはビジネスモデルがシンプルだから」である。
「ミッションステートメントは『世界のあらゆる情報とユーザーの間を橋渡しする』といった内容。非常にくっきりしたものだ。しかもそれを無償で提供するというビジネスモデル。課金しようとすると軸足がずれるから、広告収入だけで経営する。そういう、見えない垣根の中に限った放し飼いだ」(村上氏)
そしてもう一つ、Googleといえば「仕事8割、遊び2割」といわれている。これについて村上氏は、「社員が目標を立てるとき、8割くらいの力で達成可能な範囲を考えるようにしている。だから余力の2割で、他のことができる」と説明している。“2割”の部分からは、例えば自分が分担する範囲の仕事をより効率的に行えるような新しい方法を作り出すなど、目標以上の効果を発揮できる可能性があるというわけだ。最初から8割の力で達成できる目標を立てることも含め、優秀な人材ばかりを集めた少数精鋭の企業だからこそ可能な取り組みといえるだろう。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授