大きな問題は、一部のマネジメントリーダー層を除いて、この50代社員をうまく活用できないことだ。その大きな原因の1つが、役職定年制度、年功給の是正、再雇用制度等の各種施策とその運用だ。これらの制度が本来の50代の元気やキャリア活用を阻害する「逆機能現象」を引き起こしている。
そこにある問題は65歳まで雇用され、働く場を確保するために、豊富な経験と能力がありながら、「気楽な働き方」に甘んじる人が多いことだ。このことが50代社員に対するイメージとして、若年層から怨嗟のまとになる悪いモデルにもなる。
最近はさまざまな見直しが加えられ始めたようだが、役職定年や再雇用制度には一律的な運用ではなく、組織課題解決に直結する魅力的な仕事や個人の希望や能力を反映したポストづくり、また個人の仕事成果を評価する仕組みが考えられてよいと思う。50代社員を消極的に活用するのではなく、50代ミドルの活用の底上げを図るような取り組みが欲しい。
この稿の最後として50代社員に求められる変化への対応と企業としてこれを支える仕組みを検討しておこう。まず、この時代の変化を受けとどめる50代社員は自分のキャリアや人生についてどのような意識と行動を取るべきなのか。下記の図表2を参照されたい。50代は役職定年等を折り込むと立場・役割は前半と後半で大きく変化する。端的に言えばマネジャーからプレーヤーに戻り、報酬も段階的に減少する。キャリア支援上、大事なことは保有能力と発揮期待スキルだろう。
かつて入社以来、現場実務能力、マネジメント基礎能力、戦略・組織管理能力と職位上昇に伴って育成・蓄積されてきた能力が、一転、この時期からまたプレーヤーとして現場実務能力が重視される。一人の50代社員を雇用維持のために使うか、高度専門力の保持者として活用するかで成果は全く違ってくる。活用の方向性は、50代のキャリアを“ビジネスプロフェッショナル”の域まで育て上げることだ。そのような、現状の課題を理解した上で、最後に企業として、今後の50代のキャリア支援を考える枠組みを提示しておこう。そのポイントは次の3つだ。
1. 50代社員に対する前向きな活用ビジョンとトップ・組織期待の明示
2. 50代社員の雇用維持および活力増進に向けた施策作りとキャリア再開発の施策の実施
3. 50代社員の活用に対し経営サイド・現場管理者・職場が一体として支援する職場環境作り
以上、50代社員のキャリア開発支援の必要性となる背景やその課題を考えてきた。次回は50代を積極的に生かす前提として、そのキャリア意識や現実適応など50代社員の実像について考えてみたい。
1953年生まれ。大学卒業後、日本マンパワーに入社。教育事業部長、人材開発営業本部長を経て、その後再就職支援事業部門を立上げキャリアカウンセラー&人事・キャリアコンサルタントとして事業に従事。97年以降、キャリア支援コンサルタント、キャリア・デザイン・プログラムの開発・インストラクター、キャリアカウンセリングなどを経験。現在教育研修&人材事業担当取締役。CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)、メンタルヘルスマスター。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授