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» 2011年03月14日 14時40分 公開

『坂の上の雲』から学ぶビジネスの要諦:今見習うべき明治のグローバリゼーション (3/3)

[古川裕倫,ITmedia]
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グローバリゼーションとアイデンティティー

 今後ますます海外のグローバル企業が日本に押し寄せてくる。また、日本の企業も、グローバル化をしていかないと世界で生き残れない。

 もう1つ。わが国固有の問題として少子高齢化で労働人口が激減していくという現実がある。2050年には15歳から65歳の労働人口と非労働人口がほぼ同数になってしまうという現実である。

 近年のOECDの調査によると、2008年のオーストラリアでの外国人就業比率は27%、米国で17%、ドイツで9%程度であるが、日本はなんと0.3%である。外国人受け入れに非常に消極的なわが国は、女性登用、高齢者の活用に注力しなければいけないだろう。

 ますます日本の企業のグローバル化が必要となってくる。政界規模でデザイン、製造、マーケティング、採用をしているグローバル企業に、1国内で完結する企業にはしょせん勝ち目がない。わが国も、生産拠点の海外移転や海外での優秀な人材を獲得していかなければならないだろう。

 日本在住の米国人の友人が私にこう語った。「1980年代に日本の品質管理やチームワークが世界に注目されたことは、過去のこととしてあったが、今世界はそれを記憶していない。日本人は、まだ同じ状態にあると思っているが」

 その会話を聞いていたもう1人の外国人ビジネスマンがこう言った。「新幹線は東京オリンピック(1964年)、すなわち半世紀近く前からあったが、今頃になってようやく世界への売り込みに参入し始めた。国内にしか目がいっていない」

 多くの日本人が気付かないことがグローバルな人には見えている。いやはや、自分も日本人として情けない次第であり、しっかりグローバル化について考えなければいけない。

 しかし、1点言い忘れてはいけないのが、グローバル化は必要であるが、日本人が日本人としての誇りを持ち続けること、すなわち日本人としてのアイデンティティは大切にすべきということ。

 前段に紹介した福沢諭吉の言葉を現代的に置き換えれば、日本人の得意な製造であるとかサービスの高さという、わが国の優れたところを取り入れて、グローバリゼーションを目指すべきである。この辺りも大いに明治から学ぶところがあると思う。

 『坂の上の雲』は、欧米列強という脅威を目の当たりにしながら、身分制度や鎖国という足かせが一挙に取り払われた、そんな新しい時代を前向きに生きる青年たちの物語である。

 危機感の低い飽食の時代だからこそ、無意識に鎖国政策を採り、逆グローバリゼーションに進んでいるのではないだろうか。

 『学問のすすめ』(福沢諭吉)、『武士道』(新渡戸稲造)や『坂の上の雲』(司馬遼太郎)を再読して、グローバリゼーションの心意気を感じてみるのも今必要な学びである。

著者プロフィール

古川裕倫

株式会社多久案代表、日本駐車場開発株式会社 社外取締役

1954年生まれ。早稲田大学商学部卒業。1977年三井物産入社(エネルギー本部、情報産業本部、業務本部投資総括室)。その間、ロサンゼルス、ニューヨークで通算10年間勤務。2000年株式会社ホリプロ入社、取締役執行役員2007年株式会社リンクステーション副社長。「先人・先輩の教えを後世に順送りする」ことを信条とし、無料勉強会「世田谷ビジネス塾」を開催している。書著に「他社から引き抜かれる社員になれ」(ファーストプレス)、「バカ上司その傾向と対策」(集英社新書)、「女性が職場で損する理由」(扶桑社新書)、「仕事の大切なことは『坂の上の雲』が教えてくれた」(三笠書房)、「あたりまえだけどなかなかできない51歳からのルール」(明日香出版)、「課長のノート」(かんき出版)、他多数。古川ひろのりの公式ウエブサイト。


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