非常事態や赤字部門では、コンサルタントに変身せよ生き残れない経営(1/2 ページ)

「赤字」は、非常事態だ。しかし、恒常的赤字になると、当事者の感覚がまひして非常事態という認識がなくなる。企業における非常事態は、時を選ばず形を変えて襲ってくる。

» 2011年04月18日 07時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 某大企業の恒常的赤字事業部門長が、社長への業績説明を終えて高層ビル上階にある社長室を出ようとした時、社長が出入り口と逆の窓を指して「出口はこっちだ」と言ったという話がまことしやかに伝えられた。それほど企業での赤字は罪悪であり、人を堕落もさせる。

 「赤字」は、非常事態だ。しかし、恒常的赤字になると、当事者の感覚がまひして非常事態という認識がなくなる。企業における非常事態は、時を選ばず形を変えて襲ってくる。

 M自動車の数度も続いた企業ぐるみのクレーム隠蔽事件は、社内告発によって表面化したものだが、市場や関係者から猛烈な批判を浴びた。数度も隠蔽が続いたことは、M社内でこの種のクレームを非常事態とみなさず、日常茶飯事と捉える風土になっていたのだろう。しかし多く関わっていたはずの幹部の一部から、もし初期段階で企業倫理や企業の社会的責任を考え、そして高い視点から自社の将来を見据えて事故を直視し、客観的分析と対策ができていたら、あるいは違った方向へ事態は展開していたかもしれない、という声もきこえた。

 中堅の美容器具メーカーの美容機器が、ある時期市場で爆発的に売れていたが、ある日の夕方のTVニュースで、消費者関連機関が当該製品を買い上げテストした結果、宣伝にうたわれている美容効果がほぼ0である結果が出たと放映された。これに対し、社内の一部には自社データで反論すべきという意見や、しばらく時間を置いて再販売すれば市場は買ってくれるという意見もあったが、トップはこれを非常事態として捉え、企業の社会的信用と将来を考え、冷静に判断し、全在庫廃棄が得策であると決断した。

 いずれの場合も非常事態に遭遇したとき、企業倫理・企業の将来を考慮して、冷静にして客観的に分析・対策をすること、即ち戦略的対応が必要ということだ。

 今回の東日本大震災で被害を受けた企業の場合は、とてもとてもこれらの例と比すべくもないほどの非常事態だが、対応すべき姿勢の基本は同じだろう。

 筆者は、現役時代次々と赤字部門を担当させられ、随分苦労をした。

 まず、小型モーター製造部門の課長だった頃、来る月も来る月も赤字決算、経理部門や工場トップからトコトンたたかれた。当時在籍した工場では製造部門が業績を取りまとめていたので、あらゆる責任を追及され、赤字部門責任者は日頃工場の中で何があっても身を縮めていなければならなかった。当時苦しみながら、どんな手を打ったか。

 業績管理資料が、実に見事なまでに完璧にできていた。業績会議では、その指標を逐一レビューされる。関係者は、連日その指標の改善に取り組んだ。しかし、努力し、苦労する割には効果が薄かった。例えば、赤字機種納入顧客に値上げか受注辞退を申し入れたこともあったが、部分的で単発だった。関係者全員が小手先の対策に溺れていたように思う。それが許されたのも、工場の他部門が工場全体の収益を支えていたからだろう。

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