55歳で起業――10分/1000円のヘアカットで新しい価値基準を提案(2/2 ページ)

» 2011年04月25日 07時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]
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お客さまの時間を無駄にしない

 さらにこれまでの理美容店では予約をしない限り、いつ始まり、いつ終わるのかが把握しにくかった。そこで自分がいつ帰れるのかを容易に把握できることも重要だと考えた。例えば理美容師が3人いて、自分の前に3人並んでいれば、1人/10分なので10〜20分の待ちと容易に把握できる。

 「子供と遊ぶ約束をしていても、お店が混んでいて約束の時間に帰れないこともあった。月に1回のこととはいえ不満に思っていた」と小西氏。お店が混んでいるかどうかも店頭に設置された“アンドン”により容易に把握できる。込んでいれば赤色、少し込んでいれば黄色、すいていれば緑色という具合だ。

 「アンドンにより、お客様がお店に入らなくても外から混雑の状況を把握できるようにした。これにより、せっかく車を駐車場に入れてお店に来てもらったのに、カットで待たされてムダな駐車場代をお客様に払わせることを防げる」(小西氏)

 そのほかにも会社が大きくなると消費税が必要になる。しかしこれを顧客に負担させるわけにはいかない。そこで、カウンターにモニターを設置し、そこにスポンサーのCMを流すことで消費税分を稼ぐことも考えている。

 小西氏は、「想定できる問題に関しては、開店前にすべて解消することを考えた。理論はたくさんある。後はいかに実践するか。QBハウスは、理論と実践のコラボレーションの場だと思っている。常に時代にあったビジネスモデルを考えていかなければならない」と話している。

 「理美容業界は、どこのお店でも料金体系がほぼ画一化しており、一般的な理美容店では1時間/4000円程度の料金設定となっている。実は、10分/1000円だと1時間/6000円になるので、ウチはまだ高いかなと思っている。改善の余地があることから、この事業はさらに拡大できるだろう」と小西氏は話す。

 小西氏がキュービーネットを起業したのは55歳のとき。「年金がもらえる65歳にはスパッと辞めると決めていた。ダラダラと続けても、目標に到達するまでに時間がかかってしまう。そこで10年という期間を限定して、その間にいかに効率的に仕事をするかを考えた」と話す。そして公約どおり、10年後に会社を売却した。

 「業界の抵抗、行政の規制など、数多くの障害があったが、抵抗や規制があるということは成功もあると信じて仕事を続けた。業界や行政の常識にとらわれるのではなく、常にお客様に目を向ければ出口は必ず見つかる。業界の抵抗や行政の規制の壁を打ち破るのは勢いだ(笑)」(小西氏)

 小西氏は、「良いときに創業したと思うのは、当時が不況だったこと。不況だから10分/1000円というビジネスモデルを実現できた。不況でダメになる会社もあるが必ず出口はある。“こんなものがあればいいな”“こんなものがほしい”というお客様の声からQBハウスは誕生した。毎日、毎日が改革の日々」と話している。

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