先の震災を教訓とし、多くの日本企業がBCPを再点検し、より堅牢なグローバルB2Bの基盤整備に取り組み始めた。最大手のGXSは、数週間で最適なソリューションを提案、初期費用なども柔軟に対応する支援策を発表した。
日本の産業界を牽引する自動車の販売台数が東日本大震災以降大きく落ち込んでいる。4月が前年の約半分、5月はやや持ち直したものの3分の2にとどまった。自動車の組み立てには2万点から3万点の部品が必要とされ、すそ野の広い産業として知られるが、震災によってそのサプライチェーンが寸断され、長期間の操業停止に追い込まれたのが響いている。
一部報道によれば、経済産業省では今後特定地域の部品メーカーが打撃を受けても自動車の生産が継続できるよう部品共通化の推進を検討し始めたという。被災しなかった地域の部品メーカーから融通しやすくなるほか、生産ラインが簡素化できるため被災工場の復旧も迅速に進むからだ。
しかし、こうしたサプライチェーンの強化は業界を挙げた部品の共通化だけでは済まない。今日の企業間取引は情報システムによって支えられている。自動車メーカーと部品メーカーをつなぐシステムも堅牢さはもちろんのこと、柔軟さも求められる。
「先の震災を教訓とし、多くの企業がBCP(事業継続計画)見直しの一環として、企業間電子商取引のアウトソーシングを検討し始めている」と話すのは、企業間電子商取引のソリューションプロバイダーとしては最大手のGXS日本法人社長、田中良幸氏。前身がGE Information Servicesで、既に40年以上の歴史がある同社は、企業間電子取引のグローバルなプラットフォーム「GXS Trading Grid」を運用しており、企業のB2Bシステム管理業務を請け負うアウトソーシングサービス「GXS Managed Services」を提供している。
GXSの最大の強みは世界の4万社をつなぐB2Bのネットワークだ。企業は、B2Bシステムの構築や取引先との接続を自前でいちから行う必要はなく、商慣習の異なる海外企業との新規取引も迅速にサポートできる。日本でもグローバルにビジネスを展開する大手製造業や大手商社などを中心に利用が始まっていた。
「既存のシステム資産もあって、これまで一部の利用にとどまっていた日本の顧客企業も事業継続性の視点から、より安心できるクラウドサービスへの移行を加速しようとしている」(田中氏)
同社の顧客の中には、ほかのプロジェクトを一時的に中断してでも、冗長性があり、より堅牢なグローバルB2Bの基盤整備に取り組む企業もあるという。GXSでは日本企業のこうした課題解決を支援すべく、6月に入ってから新たなBCPプログラムを打ち出している。コンサルタントが迅速に出向き、相談から数週間で最適なソリューションを提案、初期費用なども柔軟に対応するという。
「GXSの企業間連携基盤を活用すれば、取引先を国内外問わず事前に拡大しておくことができる。これは災害時に業務を止めないだけではなく、企業の競争力そのものを高めることにつながるはずだ」と田中氏は話す。
なお、同社は4月初め、企業間でやり取りされるデータを無償で保管する期間を通常の3日間から最大30日まで延長する支援プログラムを発表していた。
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