Linuxの場合、特に力のあるハードウェアベンダーがミッションクリティカルな用途に耐え得るよう改良を続けたり、Oracleがデータベースを使う上で必要な機能を追加するなど、ハードウェア/ソフトウェアを問わず、多くのベンダーが貢献し合うことで成長を遂げてきた。
「オープンソースという開発モデルは、日本が得意とする製造業のカイゼン運動と共通性がある」とホワイトハースト氏。世界中の開発者が参加して、機能強化が図られ、バグも素早く修正される。
しかし、こうしたオープンソースを企業が本番稼働のシステムに実装しようとすると難しさを伴う。改良が速すぎるからだ。オープンソースはバージョンアップでバグを修正する傾向があるが、これでは企業はなかなか使えない。バージョンアップではなく、古いカーネルでも既存のアプリケーションを長期間使い続けられるサポートが必要なのだ。
「商用LinuxであるRed Hat Enterprise Linuxの本質的な役割は、Linuxの技術革新を安定化させることだ」とホワイトハースト氏は話す。オープンソースのLinuxを2、3年ごとにいったんフリーズさせ、それぞれ10年間はパッチを提供するなどしてサポートを継続する。新しいハードウェアに買い替えてもアプリケーションを書き換える必要はない。そもそもOSとはそういう役割を担っているはずだ。
しかも、オープンソースのパワーを活用しているため、「サーバOSに占めるRed Hatのシェアは20%に達しているが、売り上げは3%に過ぎない」(ホワイトハースト氏)。このことは同社が顧客に提供している価値を如実に証明している。
オープンソースの強みは、次世代アーキテクチャーであるクラウドでも発揮されるはずだ。
ホワイトハースト氏は、「クラウドは初めてユーザーが主導したコンピューティング技術だ。GoogleやAmazonが自らの課題を解決するために開発してきたもので、それもオープンソースのパワーがあったからこそだ」と話す。
Red Hatでは数えきれないほどのオープンソースプロジェクトに関与している。ユーザーのニーズをつかみ、具体的な課題を解決したい企業が主導する技術革新を商用製品やサービスとして提供するためだ。5月初めに発表されたIaaSを構築するためのソフトウェア製品「CloudForms」や開発者向けのPaaS「OpenShift」もそうした成果として生まれた。
「われわれのビジネスモデル、そして顧客に提供する価値は、クラウドでも変わらない。サーバ、ストレージ、ネットワークというインフラを抽象化し、柔軟な移行を可能とし、既存のアプリケーションを長期にわたって使い続けられるようにすることだ」とホワイトハースト氏は話す。
「Red HatはSolarisに勝つことができた。クラウドではVMwareと競合しているが、オープンソースのパワーを生かして上手く戦いたい」(ホワイトハースト氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授