わたしたちが普段考える「類似業界」というのは、同じような商品やサービスを扱っている企業のグループを指します。「食品業界」とか「ホテル業界」といった具合です。「競合」として意識するのもこの意味での「同業他社」であり、新しい商品やサービスを考えるときに真っ先に参考にするのがこうした競合のアイデアということになるでしょう。
ただそれだけでは単なる人まねになってしまうばかりでなく、下手に競合のアイデアをそのまま持ってくれば訴えられるということにもなりかねないでしょう。これは「表面的類似」の世界だからです。
したがって、アナロジーの活用には構造的に似ている遠くの他業界に目をつけることが重要です。例として、参考になる視点をいくつか挙げておきます。
・「新規顧客(一見さん)」中心か「リピート顧客」中心か
・「見込み生産」(作ってから売る)か「個別受注生産」(売ってから作る)か
・ビジネスプロセスの中での成功要因がどこにあるか?(営業か開発かアフターサービスか)
・収益「構造」が「単品売り」中心か「継続的な保守サービス」中心か
・競合関係が限られた少数プレーヤー間か、不特定多数のプレーヤー間か
(このほかにもいくらでも考えられます)
こうした視点で違う業界を見てみると、思わぬ共通点が見つかってその世界のアイデアを借りてくることも可能となるかもしれません。卑近な例で言えば、1つ目の「一見さんか常連さんか」の視点で考えれば「1人(社)目のお客様をつかまえる」のと「1度入ったお客様に2度来てもらう」のとでは明らかに成功要因が異なり、逆にその成功要因は商品やサービスが異なっても共通性があるからです。さらに個人の世界にまで広げれば、「友達が多い人」と「長く付き合いたい人」が必ずしも一致しないこともアナロジーとして使えるかも知れません。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授