日本の伝統的な「言葉遊び」で昨年ブームにもなった「謎かけ」ですが、これも「全く違う2つの世界の共通点を見つけて結び付ける」という観点からはアナロジー思考と「構造的に類似」の発想といえるので、思考トレーニングとしても役に立ちます。ただし異なっているのは、謎かけの場合の「共通点」というのは、「単なる言葉の音の共通性」、つまり「表面的類似」であることがほとんどということです。
アナロジー思考を活用するためには、必要以上に個別の事象を特殊視しないことが重要です。ついつい我々は「自分のいる業界は特殊だから」とか、「自分の立場は○○さんとは違うから」という思考に陥ってしまい、経験の積み重ねの少ない人や視野の狭い人ほどこうした落とし穴にはまり勝ちです。全く違う世界での成功事例を見聞きした場合に、まずは「どこかに自分の世界との共通点はないか?」と考えてみることによってアナロジーの思考回路が起動します。それは「心の目」をよく開かなければ気付くことができないのです。
最後にアナロジー思考の「使用上の注意」を一言加えておきます。アナロジーというのは、論理的な推論ではありません。つまりよくも悪くも「話を飛躍させる」ことが特徴だということです。したがって、うまく使えば普通では思いもつかないような発想につながる反面で、使い方を誤ると「論理の飛躍」にもなりかねないので注意が必要です。
そのためには、つなげようとする2つの世界の共通点と相違点を的確に見極めることです。「なるべく共通点を探す」という話をしましたが、逆に「共通性を過大評価」してしまうと、例えば「人間だろうが動物だろうが地球上で生きていることに変わりはないんだから同じものが食べられるはずだ」という「暴論」にも発展しかねないのです。
読者の皆さんも、謎賭けのような遊び感覚で「実は似ている」業界を探してみてはいかがでしょうか。
ビジネスコンサルタント 株式会社クニエ マネージングディレクター
東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。製品開発・マーケティング・営業・生産などの分野で
戦略策定、業務改革計画・実行支援等のコンサルティングを手がける。
著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『「Why型思考」が仕事を変える』(PHPビジネス新書)、『象の鼻としっぽ』(梧桐書院)等がある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授