規律とは、ほとんど常に自分自身との戦いです。ピンチに強くなるためには規律が必要です。なぜなら、その瞬間の基準だけに基づいて冷静で頭の切れた判断を下すことは難しいことだからです。ほとんどの人が現在から過去を切り離すことがなかなかできません。規律の無い人は無意識のうちに、過去からの感情的および知識的荷物を意思決定に載せてしまいます。そのため、誤った選択をしてしまうのです。
毎日大変な意思決定を下している金融市場のプロは、トレーディングに於いて自分を厳しく律しなければなりません。さもなければ破滅してしまいます。例えば、もし全ての取引に対し、ある一定の利益率を目標に定めたなら、そのトレーダーは自分を律し、その率に達したらその株を持ち続けることのメリットに関係なく、売却しなければなりません。規律の無いトレーダーは、もし事前に決めていた利益率にあっと言う間に達したとしても、市場に留まり自分の分け前が増えるかどうか確認します。
人はストレスの下では合理的に考えることができなくなります。しかし、規律のあるトレーダーはプレッシャーにさらされた時、直感を信じるような愚かなことはしません。規律があれば再び立ち上がることができます。トレーダー全員が値を下げてしまっても、ピンチに強いトレーダーは翌日また立ちあがり、再び取引をする準備を整えることができます。規律とは、自分の戦略を厳しく客観的な目で見つめ、上手くいかないものは切り捨てる勇気を持ち、新しい現実を受け入れることです。
規律とは自己に課したルールです。ルールとは大原則であり、何があっても守らなければならない存在です。どんなにピンチが訪れようとも自分の感情にまかせず、それに則って行動することは自分の冷静さ、客観性を養うことにも繋がると思います。
米国陸軍軍曹ウィリー・コープランドは、イラクで彼の部隊が奇襲を受けた時、ピンチの中でも適応する大切さを見事なまでに示しました。その後続いて起こった戦いを通して、コープランドは冷静を保ち、集中力と鋭い観察力を維持しました。事前に決めた戦略にこだわらず、戦況の変化に合わせ戦略と行動を変えました。コープランドが危機的状況下で見せた冷静な行動によって多くの兵隊が命を救われ、コープランドには称賛と勲章が贈られました。また、コープランドは「戦略を戦う」のではなく「戦いを戦う」方法を示しました。
人は計画を立てることが好きです。そして、ピンチに陥ると、ほとんどの人が達成できると期待していた所に辿りつくことができません。人は事前に戦略を立てておくことで、例え展開する状況によってその戦略が機能しなくなっても、安心することができます。コープランドは結果──生き残り、仲間を守る──を得ることに集中し、適応し続け、戦況が展開する度にそれに対応しました。完全に「今」に意識を集中させ、過去成功した考えによって判断を鈍らせませんでした。また、自分の感情を考慮することは決してありませんでした。自分の外側(戦争)に集中し、それによって恐怖心や興奮、混乱など彼を無力にしかねない感情をコントロールすることができたのです。
「適応」というタイトルがここではつけられていますが、どちらかというと「冷製な判断」をするために必要な物が何かということになるように思います。感情を決して出さず、その時に最善の判断力を身につけるということと言えるでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授