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» 2011年12月13日 08時00分 公開

日本の元気ダマ:障がい者とともに農業の在り方を変える、京丸園の取り組み (2/2)

[藤井正隆,ITmedia]
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農業と福祉を融合したユニバーサル農園を目指す

 そんなこともあって以降は1年に1人以上は採用することにし、現在は障がい者21名を雇用するようになりました。さらに鈴木社長は障がい者と一緒に働くようになって、自分たち健常者よりも障がい者の方が、働くことの意味を知っていることや誠実に働くことも実感しました。健常者はどうしても仕事とお金が切り離せません。しかし障がい者たちは、つらい仕事をそんなに高くもない賃金で、文句1つ言わず黙々とやり遂げて帰って行くのです。そうした経験から「障がい者と一緒に仕事をさせていただくだけで、自分達の方がありがたい」と思うようになりました。

 売上の伸びや従業員数が増えたことを考えると、京丸園はまさに障がい者と一緒に成長してきたと言えるでしょう。決してボランティア的な視点や福祉のためだけにやってきたのではないということは、経営数字を見ても分かります。

 平成9年に1人目の障害者を採用したころの売上は6500万でした。しかし現在売上は2億5千万と4倍に、従業員数は6倍になりました。この数字が、障がい者が企業にとって決してハンディでないことを証明しています。

 今、農業は非常に厳しい状況にあります。農業は儲からない産業で、所得補償をしなければならないと言われています。中には、京丸園は障がい者を安く使っているのではないかと勘繰る方もいます。「それは違います。障がい者に農業の現場に入っていただくことで、農業のやり方を変えていこうというというのが私たちのスタンスなのです。障がい者がいたからこそ、新しい農業のやり方や新しい商品が開発されたのです」と鈴木社長は話します。

 京丸園は、水耕部、土耕部、心耕部の3部門に分かれています。水耕部はみつばや葉ネギを、土耕部は研究開発的な位置付けでお米や野菜類を作っています。特徴的なのは、心を耕すと書く心耕部です。ここは障がい者を受け入れる部署であり、障がい者の働き方を支援する部署です。障がい者にとってやり易く、早くできる方法を考えて実現するのです。

 例えば片手しか動かない人が入社したら、その人が作業できるように方法や農機具を変えなければなりません。それは一見面倒なことかもしれませんが、今までの農業のやり方を変えて生産性を向上させるきっかけにもなるのです。なぜなら障がい者がやり易くなるということは、多くの場合は健常者にとってはさらにやり易くなるということ、さらには現場の生産性向上にもつながることだからです。1年に1人個性のある障がい者が入社すれば、1年に1つ新しい作業のやり方を作ることができる。実際、京丸園の農業のやり方はみるみる変わっていきました。

障がい者が作業しやすいよう、ゆっくり動くように改造されている農業用機械

 京丸園が行っているのは、福祉のための障がい者雇用ではありません。農業と福祉を融合し、農業の振興や活性化を図るのが、鈴木社長が目指しているユニバーサル農園なのです。

 農業を通じて人の幸せを創造していく、農業を活性化することでいろいろな人が働けるようになって日本の農業が強くなることを京丸園は目指しています。そのためには彼ら障がい者が必要なのです。「私たちは障がい者に来ていただき、教えてもらっている方であり、最近よく(障がい者を助けていると)誉められますが、実は逆なのです」と鈴木社長は話します。

 産業界の中で福祉を考えることが、産業を活性化させる上でも重要です。鈴木社長は、障がい者を雇用した組織が業績も上がる事実を、ほかにも広げていきたいと真剣に考えています。

 社員数56人以上の民間企業に課せられた国が定める障がい者の法定雇用率は1.8%です。しかし2011年6月の厚生労働省の調査では、この数字を達成している企業は43.5%であり、半分以上の企業が納付金で済ませています。障がい者の定義は異なるものの、先進他国と比べてもこの数値は低いと言われています。

 生まれながらに障がいを持つ方もいますが、人生の途中から何らかの障がいを持つ方が増えることが、少子高齢化が進むこれからは予想されます。京丸園が実践しているユニバーサル農園の考え方は、他の産業においても参考になるのではないでしょうか?

京丸園の元気のポイント!

  • 大道無門 障がい者に対する思い込みを無くし一緒に働く
  • 組織はかけ算 人とのかかわり方が大きな成果につながる
  • 強者の使命 弱者に対する責任を果たすのは強者の使命、尊敬される国や組織になろう!
  • イノベーション あらゆるところで成長の可能性を模索せよ

京丸園の皆さん 優しい雰囲気にあふれている

著者プロフィール:藤井正隆(ふじい まさたか) 1962年生まれ

 藤井正隆

(株)イマージョン 代表取締役 MBA(経営学修士)、法政大学院 坂本光司研究室 特任研究員。
徹底的現場主義で年間100社以上の企業視察を踏まえた実践的な教育研修とコンサルティングを実施。農業にも問題意識を持ち、日本の農家(株)も立ち上げ精力的活動中。

専門分野:組織開発コンサルティング、マーケティング戦略と実行組織の最適化。

著書:「感動する会社は、なぜ、すべてがうまく回っているのか?(マガジンハウス)」他、ビジネス雑誌に執筆多数。

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