「日本の経営者はイタリア人を見習え」――経済アナリストの森永氏

首相がころころ代わる、国土が南北に伸びているなど、日本とイタリアの類似点は多い。ただ1つ、決定的に異なる点がある。それが1人当たりの名目GDPにおいて日本がイタリアに負けている原因かもしれない。

» 2009年02月18日 11時03分 公開
[伏見学,ITmedia]

 経営環境の悪化により、業績不振に陥る企業が後を絶たない。昨年末のトヨタ自動車を皮切りに、ソニー、NEC、日立製作所など日本を代表するトップ企業が相次いで赤字転落を発表している。苦渋の表情を浮かべて業績悪化を口にする経営者たちを見かけない日はない。

 「すぐに暗くなるのは日本人の悪い癖」。こう話すのは経済アナリストの森永卓郎氏。1月29日に開催された「NTTデータ イノベーションカンファレンス 2009」の基調講演に登壇した森永氏は、現在の日本の問題点をイタリアと比較しながら指摘した。

日本人は暗すぎる

日本の経済状況を力説する森永卓郎氏 日本の経済状況を力説する森永卓郎氏

 森永氏によると、日本とイタリアは、市場の企業構成、南北に伸びる縦長の国土、首相が頻繁に交代する点などでよく似た共通項がある一方で、日本人とイタリア人の気質に関してはまったく違うものだという。

 「経営トップの挨拶が代表的だ。“わが社を取り巻く経営環境は一層厳しさを増し……”と社員に語る日本の経営者がいるが、これは日本人の典型的な悪い例。雰囲気を暗くさせている。イタリア人の経営者の挨拶は実に明快である。“アモーレ・カンターレ・マンジャーレ!(愛して、歌って、食べて)”。日本の経営者もこの明るさを見習うべきだ」(森永氏)

 なぜ日本がイタリアを意識しなければならないのか。実は1人当たりの名目国内総生産(GDP)において、日本はイタリアより下に順位を落としてしまったからである。森永氏は「(日本人と比べて)労働時間が短いイタリア人に負けている現状を認識すべき」と訴える。

 もちろんイタリアの優位性は存在する。企業の商品開発に対する取り組みがその1つだ。イタリアは若手社員の感性を尊重しあらゆるものを商品に反映させ、成否は市場に委ねるというチャレンジ精神を持つ。例えばファッションメーカーのFENDIは年間1500もの商品を開発するという。一方、日本は「企画段階から若者のアイデアをつぶしている」と森永氏は強調する。

江戸時代へ戻るべき

 日本はこのまま埋没していくのか。森永氏は260年にわたり安定した政権を築いた江戸時代へ立ち返るべきだと述べる。江戸時代の優れた点として、(1)地方分権、(2)環境配慮に関する3R(Reduce:減らす、Reuse:再利用、Recycle:リサイクル)の実現、(3)平等社会、(4)文化創出、の4つを挙げる。当時の日本は地域ごとに住民が自立しており、労働時間は少なく、新たな文化を次々に生み出していた。派遣切りをする今のような経営者はおらず、皆がきちんとしたものづくりを行っていたと森永氏は解説する。

 「米国の繁栄は金融バブルの産物であるため、米国型の経営理論だとグローバル競争の波に飲み込まれてしまう。日本は江戸時代にならい、当たり前のことを当たり前にこなしていくことが重要だ」(森永氏)

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