オリンパスでは売り上げが伸び悩んだ医療内視鏡事業を立て直すため、CRMシステムの改革に取り組んだ。その結果、3.7%だった平均成長率を7.9%に回復することに成功した。
オリンパスでは2000年ごろ、医療事業の分野で提供する医療内視鏡の市場の成熟期を迎えた。1月29日に開催された「NTTデータ イノベーションカンファレンス2009」に登場したオリンパスのコーポレートセンターIT統括本部・IT改革推進部次長の石橋正行CRMグループリーダーが、この成熟市場を打破するためのIT戦略改革について講演した。
内視鏡事業の成長が止まった理由を「顧客の要望とオリンパスのビジネス構造にギャップがあったため」と石橋氏は振り返る。医療内視鏡を使用する顧客は、メーカーであるオリンパスに修理などのサポートを求めたが、当時のオリンパスはそれを販売店に任せていた。「このギャップを埋めないと、売り上げを伸ばせないと思った」と石橋氏は改革の発端を説明した。
「顧客は販売店でなく、医療現場で内視鏡を使用する医療従事者であることに気付いた」と石橋氏。医療従事者の満足度を向上させるため、CRMシステムの構築に着手した。CRM改革は、顧客の属性の分類、顧客ガバレッジモデルの設定、標準プロセスの設計、役割ごとの活動内容や評価項目・スキルの定義、必要な情報とITシステムの定義の順で進められた。
CRMシステムは2005年5月から稼働している。2002年度から2004年度までの内視鏡事業の売り上げの平均成長率は3.7%だったが、CRMシステム稼働後の2005年度から2007年度の平均成長率は7.9%へと回復した。
「必要なのはITではない」と石橋氏は強調する。「戦略を決めてから、どんなITを使うかを決めなければいけない」(石橋氏)。顧客の属性を分類し、どの顧客にどのサービスを提供するかを検討する。同時にオリンパスと販売店での役割分担を決めた。医療内視鏡の契約から設置、メンテナンスなどの標準プロセスの設計に時間を費やしたという。営業担当者の役割や評価項目、必要なスキルなどを定めて修得させた。これらのプロセスをすべて定義した後、必要となる情報システムの選定や設計に着手した。
IT戦略の転換を始めた2002年、同社では製品システムや部品システム、輸出システムなど基幹系システムなどのシステムが複数存在していた。2006年にERP導入を完了し、基幹系システムとシステム基盤の2つにシステムを統合した。統合したシステムを軸に、ECM、SCM、CRMといったシステムの強化も平行して進めきた。「これらの3つのシステムの強化は他社との差別化を図る、戦略系のシステム」と石橋氏は位置づける。
「ITなくして経営戦略が語れないのは確かだが、ITだけでも経営は成り立たない」と石橋氏。経営戦略を支えるものがIT戦略という考えが、成熟市場からの脱却を支えたのだ。
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明治学院大学 経済学部准教授