いま日本企業が乗り越えるべき真の経営課題

“鉄砲”を使いこなすためには適材適所の人材配置をスマートな経営のためのラウンドテーブル(1/3 ページ)

スマートフォン、クラウドといった新たなIT機器やサービスの登場で企業における経営の在り方も変わりつつある。各社が判断に迷う中、iモード立上げメンバーの1人、夏野氏が今後いかにITを使いこなすべきかを語った。

» 2011年12月16日 08時02分 公開
[神野雄一,ITmedia]

個人の能力が最大限生かせる時代に

 講演冒頭、夏野氏は現在のIT技術を戦国時代に織田信長が戦法に取り入れた鉄砲に例え、次のように述べた。

慶應大の夏野特別招聘教授

 「信長は鉄砲を戦術に導入したことで知られるが、鉄砲それ自体が優れていたというよりも、ツールとして戦術に最適な形で組み込み、それまでの戦法を一変させたことに意義がある。ここ10年のIT技術で生まれたクラウドコンピューティングやスマートフォンはまさに現代の鉄砲といえるだろう」(夏野氏)

 その“鉄砲”を自社のビジネスに適切に取り入れることのできていない企業が多いと指摘する。IT技術の進化により社会を取り巻く環境が大きく変わったことで、まず、企業側で人材管理の見直しを図る必要があるというのだ。

 一昔前までは、情報は足で稼ぐものであった。ビジネスにおける重要な情報は、基本的に企業秘密であるなど、外部に開示されることはほとんどなかった。また、日本企業は高度成長期より組織全体の和を大切にする傾向があり、同等のパフォーマンスを発揮しオールマイティに使える人材を求めた。

 ところが今では、欲しい情報は、ビジネスに関することであろうが、インターネットで検索すれば容易に調べることができる。一個人が得られる情報量はかつての何十万倍にも膨れ上がっているのだ。

 「例えば、ある分野ではどのようなプレーヤーが世界に存在し、何が課題となっているか、検索することでそのソリューションまで把握することができる。このように、現在ではネット上であらゆる情報が手に入る」(夏野氏)

 また、ブログやSNSの登場により、個人が情報発信できるようになった。1人から多数に影響を及ぼすことが可能になったのだ。それに伴い、個人レベルのネットワークが構築可能になる。すると、得られる情報はさらに集積する。「もはや大企業の看板を掲げているだけでは情報は集まらない」と夏野氏は声を上げる。しかし、個人の力が大きく飛躍を遂げる時代にもかかわらず、企業の人選感覚は基本的に以前のままだという。

 「現在は、個人によってパフォーマンスが大きく異なる時代。そのため、人材は適材適所で使うべきであり、またその方が企業の成長のためには今後有効だろう」(夏野氏)

 ただ、クラウドやスマートフォンといった新たな分野は、実際にビジネス経験や業界に関する見識と、リアルな人間関係を持つことで初めてその威力を発揮することができるとも夏野氏は付け加えた。

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