日本企業は過去、事業で得た利益を組織内での利用に回す割合が欧米の企業よりも高かった。だからこそ、赤字決算の企業においても給与を定期昇給することが可能であった。だが、川村氏は世界でも異質なこうした慣行を見直し、株主価値に重きを置いた企業経営に舵を切る必要性を強調する。
「グローバル化が進めば、株主が企業の利益の使い道を見る目もますますシビアになる。株主を軽視した企業に対しては、出資が集まらなくなるのは明らかだ」(川村氏)
一方で、日本では社員が取締役に就任することが多く、そのことが身内経営、ひいては取締役の形骸化を招いていたと川村氏は指摘する。この弊害として経営陣の経営責任が問われることはあまりなく、そのことが競争力を削いだり、経営モラルを喪失させたりすることにつながってきた。
だからこそ、今、日本企業に求められているのが、「社長を含めた事業執行における専門職」(川村氏)である。欧米では、取締役会は事業執行とは独立した株主の代表として機能し、重要な経営判断は社長を含めた執行役員の任命を含め取締役会で決定される。こうした厳しい株主の監視があるからこそ、事業執行における責任を役員に厳しく問うことができ、合理的な判断が促されることになる。
「ただし、残念ながら日本には経営の専門職がほとんど存在しないのが実情。その育成とともに、彼らが複数の企業を渡り歩けるよう人材の流動性を高めることが、日本企業が再生する上で不可欠なのだ」(川村氏)
もっとも、「残念ながら製造業については、勝負がついた感がある」と川村氏。そのことを踏まえ、日本が新たに取り組むべき事業として掲げるのが、知恵をフル活用した“スマートビジネス”である。具体的には、各地で始まりつつあるスマートシティ計画を国家レベルのプロジェクトに統合。併せて、日本の全産業と公共とがネットワークで結ばれた21世紀型の社会基盤を、ハードの開発からシステムの運用までを視野に入れて構築し、グローバルに展開するというものである。
「このプロジェクトでは世界から出資を募り、オープン化を基本に多国籍企業と水平分業によって連携を図ることが前提となるが、何より大切なことは日本のイニシアティブの下に推進することだ。このプロジェクトは日本のグローバル化とともにイノベーション創造における挑戦と位置付けられる」(川村氏)
日本再生に向けた新たな挑戦。あらゆる企業がその成功のために知恵を絞ることが求められている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授