GEのIT戦略に学ぶITmedia エグゼクティブ セミナーリポート(1/2 ページ)

厳しい経済状況の中、IT予算もコスト削減を強く求められている。しかし、確固たる戦略もなく単純に予算を切り詰めていては、将来的な自社の成長の芽も摘んでしまう結果になりかねない。「正しいコスト削減」とは、どのような方向性のものなのか。

» 2010年01月22日 12時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 130年以上の歴史を持つ世界最大のコングロマリット(複合企業体)、GE。ダウ平均株価が1896年にスタートした当初から指定銘柄とされ、かつ現在まで残る唯一の銘柄としても知られる。そうした真のグローバル企業であるGEではどのようなIT戦略をとっているのか。2009年12月4日に開催された「第11回 ITmedia エグゼクティブセミナー」で、GEキャピタルジャパン 執行役員CIO(最高情報責任者)の松本良之氏が、その一端を語った。

「革新と規律」の伝統を守るGE

「GEは、明確な意図の下に革新を続けながら規律を重んじる経営を、130年にわたって大切にし続けている企業。革新と規律、それがGEの伝統だ」と松本氏は言う。

GEキャピタルジャパン 執行役員CIOの松本良之氏 GEキャピタルジャパン 執行役員CIOの松本良之氏

 革新は、製品やサービスの研究開発だけのことではない。同社は業務改革にも積極的に取り組んでいる。近年では、前CEOジャック・ウェルチの時代から、20年以上におよぶ改革を進めてきた。

「改革は段階的に進められ、最初は『Work-Out』と呼ばれる作業から始まった。いささか官僚的になり、硬直化していた体質を改めるためのもので、それまでの業務の中で意味のないこと、やらなくてもいいことを探し出し、なくしていった。それから合理化やコスト削減、プロセス改善などを、『CAP』という手法で実現している」(松本氏)

 CAPとはGE独自の用語で、「Change Acceleration Process」の略。組織や仕事を変えていくための取り組みだ。こうした変化には、しばしば抵抗する人たちがいるものだが、GEでは、そうした人たちに対応する手法を独自のテキストにまとめ、それを用いて各部署から選ばれた変革推進者を教育したという。同じ部署の人たちを通じて抵抗を抑え、組織や仕事の変化を浸透させていったのである。

 さらにその後はシックスシグマなど、より高度な取り組みへとステップアップしていった。こうした一連の業務改革にはITも深くかかわっている。GEのIT戦略は「内部統制」「インフラ標準化」「プロセス改善」「生産性の向上」という4つのテーマで構成されているという。松本氏は、これら4つのテーマに沿って、GEの取り組みをいくつか紹介していった。

人事情報システムにみるIT戦略

 GEは現在、「GEエナジーインフラストラクチャー」「GEテクノロジーインフラストラクチャー」「GEキャピタル」「NBCユニバーサル」という4つの事業セグメントを擁している。世界中に拠点を持つグローバル企業であり、企業買収も頻繁に行っている中で、伝統である規律を徹底するためにITが活用されている。IT活用にあたり、内部統制、インフラ標準化、プロセス改善、生産性の向上という4つのテーマに力点が置かれた。

「5年ほど前に人事情報DBの統合を行ったが、3〜4年の期間を費やした上に、ものすごい努力が必要な取り組みだった」と松本氏は言う。人事情報の統合は大切だと誰もが認めるものの、いざ実施しようとすると、買収した部門が持っていた文化や、各国の地域性などを理由に反対される例が少なからずあったのだ。最終的には、米国のSOX法のような内部統制の必要性からその利用が徹底された。

「こうして全社の統合人事DBを作り上げ、インフラを標準化することができた。それを元にアクセス管理や情報管理を実施し内部統制を確立した。人事システムも全世界の従業員をまったく同じ基準で評価し、世界規模での人材最適配置を行うという経営理念がより徹底され、人材の国際的な最適配置による成長の活力が生まれた。また、このように統合された人事DBは、プロセス改善につながっている。これにより、業務プロセスやワークフロー、グループウェアなどのシステムも整備し、生産性の向上を図っていった」(松本氏)

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