組織の設計は成り行き任せにしてはいけない。「能力、構造、プロセス、報酬、人材」を考慮すること。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
組織コンサルタントであるエイミー・ケイツとジェイ・R・ガルブレイスは、5つの分野における経営思考に影響を与える、広範囲を網羅した本を出版しました。本書は組織設計の初歩的な解説から始まり、「どうすれば顧客に最高のサービスを提供できるだろう?」、「どうすれば国内外の顧客に効率よくサービスを提供できるだろう?」、「どうすればマトリクス構造の一番良い点を無駄にすることなく取り入れることができるだろう?」、「適度な中央集権化と分権化とは?」、「企業、特にすでに成功している企業は、どうすれば革新を促せるのだろう?」などといった、自宅で事業を立ち上げたばかりの起業家から、役員室で仕事をするCEOまですべての経営者が直面する主な問題に洞察力に満ちた形で直接取り組んでいます。
どのチャプターも考察と提案と実践的なアイディアで溢れており、その割に複雑さを感じさせません。しかし、残念なことに、著者達は、自分達が提案する「スターモデル」を信頼して幅広いアイディアを組み込もうとすることで、多少複雑にしてしまっています。スターモデルは確かにコンサルティング・ツールとして価値のあるものですが、本書の中では、必要だからというよりは仕方が無いから登場しているように思えることがしばしばあります。これは、組織内では決して起きてはならないことだと著者達が考えている状態です。それでもやはり、組織の構築について意思決定を下す人や提案をする人に本書をお薦めします。本書は、大きな変化に備えたり、新たに発生した問題に対処したりする時に、読み返すために本棚に置いておくべき1冊です。
優れた企業の共通点、それは組織設計を革新し続けていることにあるといっても過言ではないでしょう。これは、業種業態によってなにがしかの異なりはあるものの、一企業である以上、ここの進達は必然たるものといえます。また、企業はキャリアを増すことで、人事、プロダクツ制作、マーケットにおけるイノベーションは絶対に欠かすことのできないものとなり、どのタイミングで誰がどのように決定を下していくかという点が、優れた企業として存続するための大きなポイントとなるのではないかと考えられます。
しかし一般的に、多くの企業は従来のそれにより決定を下したり、場合によっては組織設計の革新そのものを怠るなどの企業も少なくありません。このようなことからは、企業収益を一定に保つということを可能にしたとしても、新しい世界を開拓し生産性を向上させるというゴールに辿り着くことは非常に困難なものだと考えられるのではないでしょうか。
何れにせよ、発展を遂げ続けているほとんどの企業の思考ベクトルが顧客中心主義へとパラダイムシフトしている以上、時代に乗じ、最も適した知識や方法を企業に導入することは至極当たり前といえるようです。
本書「組織設計」は、一クライアントが生涯に渡って企業に売上げをもたらす顧客生涯価値を長期的な視点で考察し、それに伴った具体的な構造の創り方を解説しています。イノベーションの背景にある人口減少と経済縮小に機先を制す本書の中身は、本当の意味での改革、革新、創出を実践可能なレベルで説き起こしているため、決定権者は元より、組織、チームを牽引するリーダーに是非お薦めします。
組織設計は、計画的および戦略的に企業の中核要素を合致させることで、企業の潜在能力を最大限高めることを可能にします。そして、成功を確実にする手法を使って企業を経営する、時代遅れで行き当たりばったりの手法を捨てさせてくれます。組織が適切に設計されると、その企業は良い仕事を生み出すことができます。反対に、構造に欠陥があると、それが原因で生じた問題を回避する手段を探さなければならなくなり、お金と時間を無駄にしてしまいます。
組織設計フレームワークを使って設計を始めるには、企業の戦略を基本的な根拠として意思決定を行うようにして下さい。企業の戦略が明確になって初めて、組織設計を始める準備を整えることができます。組織設計を実行する際は、企業の生涯における必要不可欠で連動した5つの要素を考慮する必要があります。この5つの要素を考慮することで作り出されるモデルを「スターモデル」と言います。
スターモデルを知る!
1、能力
企業の能力あるいは達成したい目標を明確にすることから始めて下さい。例えば、製品やサービスに市場で注目を集めるような競争優位性を持たせることなどが考えられます。
2、構造
次に、企業にとって最適な構造を評価して下さい。その際、その最適な構造の中でリーダーや経営者が公式の権力や権限を行使する方法を考慮に入れて下さい。企業構造は、ビジネスの大きさ、ロケーション、製品の多様性に合わせて「機能、地理、製品あるいは顧客」を基盤に構築することができます。
3、プロセス
企業内で定着したプロセスによって、社内での情報の流れ方が決まります。どの企業にも部署間の連携が欠けている縦割り型構造は存在しますが、業務プロセスは必ず情報のスムーズで効率的な流れを促進するものでなければなりません。「格子型構造」を促進し、部署間の意志疎通を促して下さい。
4、報酬
企業全体の利益のために最善を尽くそうという意欲を従業員に持ってもらう方法を考えて下さい。企業の報酬制度は、企業が何を本当に重要視していて、どこに向かいたいと思っているのか、従業員に明確に示すものになります。
5、人材
「従業員の採用、配属、トレーニング、育成」といった人事活動によって、組織設計の中で戦略を実行するために適切な人材を集める取り組みの方向性が決まります。きちんと選別された労働力は、企業が戦略を推し進める上で役に立つ「能力」と「視点」をもたらしてくれます。
ここでは、組織設計の基本的なことと要点をわかりやすく解説しています。逆に言えばこの通りの方法をきちんと理解し実行した上で、浮上した問題点は迅速かつ明確な原因究明を可能にするのではないでしょうか。もっとも、そこに至るまでにスターモデルを企業が望んだ結果へと導けるように実践を通じて強化していくことが重要だと思います。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授