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» 2012年06月27日 08時00分 公開

海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点:スターモデルを使って組織設計の5つの難題を解決する方法 (3/3)

[ITmedia]
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マトリクス型組織

 マトリクス型組織を構成することは難しいことです。しかし、複雑なビジネスを管理する際には検討する価値のあるものです。マトリクス経営は、うまく機能すると組織をまとめる効果が期待できます。また、新しい指揮系統が生まれ、協働作業が促されることが期待されます。しかし、マトリクスが一番適しているのは、成果のあったチーム志向のフレームワークをすでに持っている企業です。

 基本的に、マトリクス型組織とは、一部の従業員に2人(またはそれ以上)の上司をつけるもので、複数の組織的目標を目指すものです。この上司は、複数の当面の目標を持つ事業においてさまざまな役割を果たします。マトリクス型組織はコストを削減することができます。例えば、単純に二重の指揮系統を作ることで、1人の従業員に2つの州にまたがって仕事をさせることができます。

さらに、マトリクス型組織は、違う国にいる従業員と強力な協力関係を作る必要のあるグローバル化が進む場面でも取り入れることができます。

 マトリクス型組織は、共有と相互作用を促進するツールです。マトリクス型組織により、従業員は多様なビジネス視点を取り入れることができます。また、優秀な人材を育成するシステムでもあり、これによって将来有望な従業員が企業の1つの場所から動けなくなるということがなくなります。そして、彼らを最も必要とする場所へ移すことができます。

 プラスの面がある一方で、マトリクス型組織は組織の重荷になり、部署間の話し合いをややこしくしてしまう場合があります。マネジャーは決断を下すために意思疎通を図り、交渉しなければなりません。しかし、決断に辿りつくまでに時間がかかることで、ビジネスがダメージを被るおそれがあります。また、人的負担のことも忘れてはなりません。2人以上の上司に報告したり、複数の部署を指揮したりすることはストレスの大きい負担になります。

 マトリクス型組織の具体的な有効的特性とそこに伏在するマイナスの因子について述べています。マトリクス経営はうまく機能しなければ、経営に損失を被るという特性があるため、導入に於いては、既に実績のあるチーム志向のある企業が最もスムーズなものとなるようです。また、この型の組織は多様化しているため、人的負担を軽減するためのルールを必ず守ってください。そこを押さえることでこの組織構成は、圧倒的に力を発揮するものと考えられます。

中央集権か分権か

 中央集権化するか、あるいは分権化するかは、企業戦略の一部として決断されなければなりません。中央集権化とは、部署から特定の機能を奪い、その機能を企業の中核に置くものです。分権化とは、反対に機能を部署に下ろすものです。中央集権も分権も、賛否両論があります。中央集権化すると、費用を削減したり、手順に一貫性を持たせたり、専門知識を組織中に広めたりすることができるなど、すぐにプラスの効果が現れます。

 同じように分権化にもメリットがあり、マネジャーはスピードの速い世界で素早く革新することができます。しかし、過度に中央集権化すると、プロセスが遅くなる上、少しも向上しなくなり、マネジャーを苦しめることになります。また、過度な分権化は、沢山の革新やアイディアを生み出すことはできますが、量が増えることでスケールが小さくなってしまう恐れがあります。

 中央集権化あるいは分権化の程度を決めるには、業務手順を検証して下さい。例えば、もし繰り返し行う活動を標準化する必要があるならば、中央集権化して下さい。一部の意志決定プロセスはこれに当てはまります。これは、個人のアイディアを奪うためではなく、企業が適切なレベルで確実に「意思決定体制」を持つために行うものです。また、中央集権は、企業買収を行った後に共通の文化を作る上でも役に立ちます。

 分権化にもまた、組織原理としてメリットがあります。もし複数の顧客と複数の取引を行っているのなら、現場の従業員にはある程度の自主性を持たせることが重要です。自分たちで決断を下し、その決断が結果にどのような影響をもたらすのか考えることができれば、チームの士気は上がります。また、巨大な官僚的組織に報告する必要が無い場合、人は沢山の仕事を素早くこなせるようになります。反対に、従業員が十分なスピードで対応する権限を持っていない場合、顧客を失う可能性があります。これは革新にもいえることです。素早く反応し、現場の声にこたえ、実験することができれば、革新精神はもっと早く花開くでしょう。

 どの程度の中央集権化と分権化を行えばいいのか決めるには、顧客と結果に最も近い場所にいる従業員の働きに敬意を払うために、分権化することから始めて下さい。それから、監査や報告のような「コンプライアンス活動」の意味合いを持つものはすべて中央集権化して下さい。これに加え、部署特有でないものや、組織内すべての部署が共有しなければならないものはすべて(部分的でも全体的でも)中央集権化して下さい。最適の形で中央集権化がなされると、泥沼のような官僚制度は生まれず、代わりに「協調する仕組み」が生まれます。協調する仕組みが生まれることで、重要な知識が組織内に広まり、組織内の人間すべてに影響を及ぼす政策ガイドラインが作られます。

 中央集権化と分権化では、企業が求めるビジョンで大きく変わるものと思います。これは、双方に持ち味があるため、十分検討した上で遂行することが賢明だと思います。ポイントは分権化からスタートすることのようです。そして「強調する仕組み」が従業員のモチベーションにダイレクトに反映するため、この部分は、どのような企業に於いてもしっかりと向き合い取り組んでおくべきガイドラインであるといえるでしょう。

著者紹介

エイミー・ケイツは、組織設計を専門とするダウニー・ケイツ・アソシエイツ社の共同経営者です。ジェイ・R・ガルブレイスは、南カリフォルニア大学のセンター・フォー・エフェクティブ・オーガニゼーションズの上級科学研究員です。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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