「中間管理職」は組織の中では、トップ管理職と、一般職の間に位置し、両社の考えをうまくすり合わせるまとめ役を担っている。その心構えや立場、そして行うべきことを明確に理解することによって、会社そのものを活性化させることができる。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
企業のCEOとトップ管理職の研究のために、森の木々が伐採され、莫大なお金が費やされてきました。しかし、この待ち望んでいた本書の中で、ポール・オスターマンは今までとは違うことをしています。彼は中間管理者の地位や、彼らが過去数十年に渡る企業の大混乱を切り抜けた方法、そして彼らの仕事がどのように変わったかをよく観察しています。
管理職層が全体的にかなり減っているにも関わらず、30年前よりも中間管理者の数が増えていることに読者は驚くかもしれません。業務の無事完了を確実なものにしてくれるのは中間管理者です。また、アジェンダを設定するのはトップ管理者の仕事かもしれませんが、それを実行するのはチームを率いる監督者です。オスターマンは、中間管理者や彼らの仕事に起こった出来事にまつわる誤りを正しています。中間管理職の重要な仕事やその職に就く人間に関するオスターマンの新鮮な見解をお薦めします。
「中間管理職」は組織の中では、トップ管理職と、一般職の間に位置する職務として、経営者側と労働者側の考えをうまくすり合わせるまとめ役という大役を担う、パイプとしての機能を持ったポジションといえるでしょう。もちろん、「中間管理職」と一言で言っても、それぞれの人の業務に対する考え方や会社の風土によって行うべき仕事や、実践されている内容に違いがあるのは当然でしょう。
しかしながら、言えることは、経営者、労働者両方の立場をしっかり理解していくことが大切です。それ故に、与えられたミッションはかなり多岐に渡りますので、機械的に動いてしまいがちですが、それではそのポジションにうまく居続けることは難しいのではないでしょうか?多くの企業では「中間管理職の研修」を行い、行うべきことについてや、心構えなど多くの知識を身につけさせる努力をしていることも事実です。確かに新しい仕事を行ったり、そのミッションの途中で業務の見直しやブラッシュアップという意味での研修は大切でしょう。
そういう意味では「中間管理職」という重要なポジションだからこそ、その心構えや立場、そして行うべきことを明確に理解することによって会社そのものを活性化させていけるのだと思います。
本著は、そうした「中間管理職」に焦点を当て、これからそのポジションに付く人がどういう心構えを持たねばならないかということと同時に、その職務を客観的に把握し、これからの中間管理職に求められるものについて書かれています。では、その内容について見ていきましょう。
すべてのビジネススクールの学生は、マネジメントと経営者について学びます。しかし、そのカリキュラムのほとんどがトップ管理者、つまり能力は高くても比較的少人数の人々に焦点を当てたものになっています。管理者のほとんどは中間管理者ですが、分析家は彼らを研究、リサーチするよりも、過小評価し攻撃する傾向にあります。また、カール・アイカーンなどの投資家やトム・ピーターなどの権威者は、管理職をまるで全く能力を発揮できない人間が行う無駄な試みとして論じる傾向にあります。
中間管理者は組織の役立たず、あるいは企業欲の犠牲者などと風刺されていますが、それに似付かず中間管理職に就いているほとんどの人間は、自分達は仕事を全うしようと努力しており、企業ではなく同僚に忠誠心を持っているプロであると考えています。トップ管理者が企業の方向性を見定め、アジェンダを設定する一方で、中間管理者はそのアジェンダを実行し、CEOが設定するビジョンを実現させるために必要な日々の業務を行います。どのレベルであれ、企業を運営するには中間管理者が何をするのか、そして現代の企業の中で中間管理職の仕事はどのようなものになりつつあるのか、知っている必要があります。
企業構造の破壊によって、全体的に管理者の数が減ったと一般的に認識されています。この思い込みは無理からぬものですが、間違いです。人員削減や規模の適正化、ディレイアリングやその他の効率性志向のプログラムは企業構造を変え、従業員の数を減らしたかもしれません。それでも、管理者の人数を減らすことはありませんでした。なぜなら、それでも誰もが何らかの監督を必要としているからです。仕事は変化し階層制度は崩壊しましたが、それでも企業は従業員の日々の業務によって自分達の目標が達成されたか確認するために、管理者を必要としているのです。米国の国勢調査によると、米国の労働者のうち8%が管理職に就いていることが分かりました。
実際、20歳から64歳の民間企業に勤める雇用管理者の割合は、1983年の6%から緩やかに上昇し、2002年には8.5%を上回りました。また、従業員を1度でも監督した事のある人を含めれば、19%近くになる調査結果も報告されています。
中間管理職という職務に対しての意識は、投資家などが持つイメージと、管理職本人が抱いているものとは全く異なるようです。ただ、言えることは、経営者は会社の向かう方向を示すことが任務であり、中間管理職はその現場に降りて、実際の舵取りをすることが任務です。
ともあれ、経営者がその役割を担えば中間管理職の必要性はないようにも思えますが、実際にはその目標値を達成しているかどうかを把握するための管理者は必要であり、そのための中間管理職は実際には増えているというのは意外な結果です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授