インターネットの出現は「教育」の現場にも革新的な変化をもたらし、仮想教室は広がり続けている。しかし「いつでもどこでも授業を受けられる」「地域性を気にせずに配信できる」という理由だけで普及しているのだろうか。仮想教室が広がり続ける本当の理由とは?
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
マシュー・マードックとトレイオン・ミュラーは2人とも、数多くのフォーチュン500社を顧客に抱える大手企業教育会社であるフランクリン・コヴィー社のオンライン学習の上級管理者です。素晴らしい、信頼出来る本書の中で2人は、オンライン学習戦略を構築する方法と、仮想教室を設計し立ち上げ、運営する方法を明確に教えてくれています。各チャプターは、彼らが定める仮想学習のプロトコルを正確に反映しており、チャプターの最後には練習問題が載せられています。仮想学習のプログラムに関する具体的で分かり易く、熱心な説明がなされた本書を、学習部門主任や、企業教育およびトレーニングの専門家にお薦めします。
インターネットの出現は「教育」の現場にも革新的な変化をもたらしました。オンライン教室という概念は、古くから、テレビやラジオでの教育番組が原点であることは間違いないでしょう。しかし、それはあくまでも「一方通行」のものでした。確かに受講者(視聴者)からのはがきや電話での投稿とそれに対しての回答も存在はしたのですが、かなりの時間差が生じ、リアルタイムでのコミュニケ−ションが成り立つことはありませんでした。
しかし、インターネットの出現により、専用回線を通じて、受講者はどこにいても受講ができ、そこでの対話が可能になりました。もちろんリアルタイムでの講義でなくても、パソコン上でのコミュニケーションが完結します。また、コンテンツそのものも、動画、音声、画像、文字とあらゆる方法での配信が可能ですので、その内容によって分類して制作することもできます。
では、どうしてここまでオンラインによる仮想教室が広まったのでしょうか? 「いつでもどこでも授業を受けられる」また、配信者側も「地域性を気にせずに配信ができ、受講者が集められる」というだけでは、ここまでの普及がないように思えます。
本書では、そうした「仮想教室」の普及の謎から、どのようなコンテンツ作成や運営をしていくことが望ましいのか? について細かく記載をしています。これからの仮想教室を運営するに当たって、必要となることはここから学ぶといいでしょう。
仮想教室とは、「新しい学びの場」であり、企業が使える境界線の無い新しい教育手法です。
その可能性を考えてみましょう。日本の10代の若者が携帯電話を使って新しい話題について学んでいる同じ時に、オーストラリアの企業家は仲間が集まるオンライン・ソーシャルネットワークから有益なアドバイスをもらい、デンマークのブロガーは登録者とデータを共有しています。このようなインターネットやパソコン、携帯電話を使った激しく知識を求める行為を、仮想世界での「学びの爆発」と呼びます。学びの爆発によって、情報が一気に手に入り、実践に対するフィードバックが一瞬で生まれます。そして、そこでの未来に限界はありません。
テクノロジーの急速な発展のおかげで、従来の学習モデルは「爆発」し、ブログやソーシャルメディア、ウィキからポッドキャスト、アプリ、そしてオンライン・コミュニティまで数多くの「学びの欠片」に分散されました。学びの爆発は、1439年にヨハネス・グーテンベルクが西洋で初めて活版印刷術を開発したことから始まったと考えられます。
そして、その他のさまざまな偉業が爆発のスピードを上げました。例えば、1907年のグリエルモ・マルコーニによる無線電信の開発、1937年のベル研究所によるコンピューターの発明、1989年のティム・バーナーズ=リーによるインターネットの基盤の開発などが挙げられます。また、2006年から2010年には、世界のWiFi受信地域が155%増えました。
2007年には、幼稚園から高校までの米国の学生100万人がオンライン・コースに登録しました。調査によると、オンライン・コースで学ぶ学生は、従来の学習法で学ぶ学生と比べ、成績が良くなることが分かっています。また、企業に目を向けると、仮想教育を行う割合は、2008年には45%でしたが、2009年には59%に増加しました。
学びの爆発には次のような9つの法則があります。
学びというと、特別な勉強をしたり、学習をしたりと考えがちですが、インターネットという情報の宝庫から、自分が知りたい情報を得ようとする動きもひとつの学びと考えるという概念を通せば、仮想教室とは、携帯電話やPCなど、情報通信機器のすべてを指すのではないでしょうか?
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授